Aliexpressで買った5V入力で、±12Vを出力できるDC/DCコンバータを持っています。USBや乾電池から手軽に両電源が得られるとうれしいと思って買い置きしたものになります。ちょっと残念なのは、プラス側50mA、マイナス側30mAがリミットなので、もう少し何とかならないかと思考してみました。
素性を調べる
DC/DCコンバーターには”B2F39e”と刻印があります。”B2F39e”と"converter"で検索すると情報はほとんど出てこないなかで、なぜかLT1930/LT1930A - Analog Devicesのdatasheetがひかかります。さらにiphoneで検索すると、販売サイトの商品名に"B2F39"と表示されているところを見つけました。どうやらMT3540という形式の中華企業製コンバータのようです。ともに1.2MHzでスイッチングするstep-upコンバータで、とてもよく似ています。データシートの書き方までよく似ています。
入出力と代表例はこのようになっています。
出力電圧は通常のレギュレータとおなじで、R1とR2の比で設定します。
現品の回路を読み解き、LTspiceで出力電圧と電流を計算してみます。そして、パラメータを弄って±5V出力に変更したとき、どの程度の電流が許容できるか検討してみます。
期待は、50mA x 12 / 5 = 120mA
です。
DCコンバータはMT3540の代わりにLT1930(LT1930Aは2.2MHzスイッチング)を使います。
±12V出力
コンデンサ以外のパラメータ値は実機から読み取りました。コンデンサ容量はdatasheetにあった10uFを全てのコンデンサに適用しています。
負荷の抵抗を適時大きくしていったときの出力電圧と電流を見ます。負荷電流が大きな時は設定の電圧に到達できません。グラフを見やすくするため、設定電圧に到達しないケースは表示していません。
±12.5Vが出力されるR1,R2の設定に対して、シミュレーションではプラス側12.5V、マイナス側-12.0Vが出力できます。
出力側に流す電流が大きいときは12Vの出力が出ないシミュレーション結果です。設定電圧の12Vが出るケースでの電流の限界は、プラス側90mA、マイナス側84mAです。(ピンク色)仕様がプラスが50mA、マイナスが30mAです。仕様は発熱などの要因を考慮して決めているのでしょうから、この計算方法で求められた電流限界値のほぼ1/2の値が電流の許容値とみることができます。(2倍の余裕)
±6V出力
R1と並列に抵抗を半田付けして、R1の値を小さくします。150kΩを付けて公称82kΩになります。出力6.4Vが抵抗比による設定値です。
シミュレーションではプラス側6.4V、マイナス側-5.7V が出力できました。設定電圧に到達するケースでの電流の限界は、プラス側114mA、マイナス側100mAで、1/2を許容値と考えればプラス側60mA、マイナス側50mAです。
シミュレーション補足(オリジナル回路)
シミュレーション
±12V
R1抵抗の変更
±6V出力に変更するためのR1抵抗の変更は、下図の状態です。最初は、勘違いして図の左のように150Ωの抵抗をつけてしまいました。これを外そうとしたら元の180kΩのチップ抵抗も外れてしまいましたので、新たに図の右のように68kΩ+20kΩとしました。
測定結果
シミュレーションで見られたような電流増加に伴う出力電圧の大幅な低下は見られません。しかし、マイナス側は明らかに電圧の低下が確認できます。なおかつ、12V出力に比べ6V出力では、より大きな電流まで電圧低下が起きていません。
期待値は許容電流を2倍の100mAでしたが、そこまでは行かないようです。数値で表すことは難しいですが、±5Vに変更すると許容電流は大きくなると思います。