電源入れても動作しない Advantest R6441A を修理してみたが...

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label計測器

 フリマサイトで電源入れても動作しないAdvantest R6441Aを入手しました。この前に直した経験に味をしめての修理トライアルです。

スイッチ周りの接触不良か、電源関連のコンデンサ故障だと思ってポチったのですが、想像をはるかに超えた重体患者の個体でした。

送られてきた荷物は、中で何かがゴトゴトと音がします。梱包を開けると白っぽい粉が出てきました。バッテリが液漏れを起こし、腐食でそれが外れてゴトゴトと音がするのは想像できたのですが、筐体をあけてみてそのすごい状況にびっくりです。

バッテリが爆発したのだと思います。周囲に液体が飛び散り、基板上のICを初めとしてあたり一面を腐食させています。バッテリがあったところは赤さびが固まり、取り除いてきれいにしてみないと状況はわかりません。

安く入手できたので修理の練習材料として潰しても仕方なしの気持ちで色々やってみて、経験値を増やしていこうと思います。その結果として、動いてくれたらラッキーです。

動作チェックと現状確認 

正面パネルのスイッチを押しても何も起こりません。そこで通電の有無からチェックしていきます。バックパネルの電源コネクタの中にヒューズが入っています。これにはちょっとは期待したのですが、ヒューズは切れていませんでした。

トランスは100Vから240Vまで4種類の電圧に対応しています。2次側の基板へ繋がっているのは紺色の線2本だけです。紺色の線からはAC14Vが出ていました。赤白の5本線はRS232Cコネクタから来ているシリアル通信用です。さらに、GP-IBのインターフェースユニットがついていました。これは使わないので撤去します。


基板の上半分が動作のための回路で、アルミのカバーでシールドされている下半分が各種項目の計測のための回路だと思います。そこで、上半分のICに来ている電圧とショートの有無を見ていくことにします。ICの刻印を頼りにDatasheetを探し出して、GNDとVCC(供給電圧)ピンを調べます。

各々のICを調べたときの手書きメモを下記に載せます。各ICともGNDとのショートはありませんでした。また、正常な電圧の値かどうかは不明ですが、各々のICのVCCへ電圧が来ていました。

なかなか原因らしきところが見つかりません。9602の製造番号のICがありました。この前のR6451Aより新しい個体のようです。



損傷部位

問題のバッテリがあった箇所です。すごいことになっています。何種類かの部品が爆風で吹き飛んだと思われます。GP-IBのコネクタの根本は錆がこびりついています。


アルコールで洗浄しながら、錆をスクレーパで取り除いて、また洗浄。これを繰り返すと素地が見えてきました。左図が今回のR6441Aで右図がこの前修理したR6451Aです。電解コンデンサ容量に違いがありますが、幸いなことに回路構成はR6451Aと同じでした。

損傷したR6441A(左)と正常なR6451A(右)

A部の損傷状況

  • 抵抗 R53(221、220Ω):半分が吹き飛んで欠落、パッドが剥離
  • コンデンサ C55(105、1uF):吹き飛んで欠落、パッド剥離
  • 抵抗 R52(224、220kΩ):抵抗は大丈夫そうだが、そこへの回路パターンが剥離

B部の損傷状況

  • 回路パターンは目視で大丈夫そうに見えるが、薄く(細く)なっている線がある

C部の損傷状況

  • ピア周りの回路パターンが吹き飛び欠落


C55は電解タンタルコンデンサというものらしいです。耐圧が35Vで容量は1uFです。タンタルコンデンサには正負の極があって、その両極が真下にあるIC(953B)の4番、5番端子に接続されています。

=SV・E/SV=
 これは通常タンタル電解。現在は見かけないのでもうシェア無いかも。E/SVはSVの鉛フリー品なので性能も外見も同じもの。
sv_esv
 耐圧の次のアルファベットは製造年月を表している。但しアルファベットのIとO(又はiとo)は数字と紛らわしいので使われない。10VであってもボルトのVではない。大文字小文字を区別するので48通りあって一巡すると元に戻る。左アノードで容量・耐圧は通常表記だがAやA2では乗数形式+JISコードになるので注意。引用元:タンタル電解愛好会


953BはおそらくMitsubishi Electric Semiconductor社のM51953Bと思われます。類似のM51957BのDatasheetをみるとシステムリセットICと言われるもので、入力電圧が閾値を超えるとシステムのリセットを行うICのようです。上記のタンタルコンデンサはこのICの4(GND)と5番に繋がっており、リセットを遅延動作させる働きです。

きっと、この部分が吹き飛んだのでリセットICが正常にリセットできず、シシテム起動をしないのだと推定します。

修復

パッドごと吹き飛んでいるので、リード付きの部品を使って修復します。

下記のイメージメモで緑蛍光ペンで着色した箇所が修復部位です。バッテリは注文前なので以前修理したR6451Aから外したものを仮に使います。抵抗のR53は片側だけ残っていたパッドを利用します。ここに220Ω抵抗のリードをハンダ付けしました。もう片方はバッテリのリードにハンダ付けです。C55はタンタルコンデンサの代わりにリード付きのセラミックコンデンサにしました。Datasheet ではCとしか表現されていないのですが、タンタルコンデンサである理由は何なのでしょう。R53はリード付きの220kΩに交換です。

続いて、C部の吹き飛んだパターンを修復します。裏面が破線のような回路パターンになっていたので、R53から左の2個のピア穴に至るすずメッキ線を裏面に通して、回路パターンにはんだ付けしました。


修復し終わった状態です。バッテリは仮付のため浮かせています。周辺部品をいじるにはバッテリが浮いている方が作業しやすいです。ただ、R53
も浮いているので、いつか引っ掛けてパターン剥離になりそうです。


32ピンのICを引き抜いたら腐食した16、17番ピンが折れてソケット側に残ってしまいました。代わりの足をハンダ付けします。



起動はしたけど、ここまでか

やりました。問題はあるもののスイッチONで起動画面が出てきました。ここまで3日かかりました。

ただ、動画には表れていませんが、パネルのスイッチを触っていると画面がフリーズしたり、画面が落ちたり、電源スイッチを押しても起動しなかったり、非常に不安定です。


その後、何日かかけて以下のことを行いましたが、不安定な状況は変わりません。
  • 基板を歯ブラシでこすりながら、アルコール洗浄とエアブロー
  • 各種ICやRAMのハンダ部位の再加熱
  • コンデンサの全交換
  • C55遅延コンデンサをタンタルコンデンサに変更(ESRの影響するのか?、適値?)

現時点の不具合は何点もあります。お手上げ状態です。さわりまくっているうちに、何種類かのErrが出ていたのですが、最終的に起動するとErr03が出るようになってしまいました。


さらに、次のような状態なので、お手上げです。ハンダの練習基板になってしまいました。
  1. 起動が不安定。スイッチONで起動するときと、しないときがある。
  2. 起動すると、最初に”Err03”と表示される。マニアルではキャリブレーション関連の模様だが、解除方法がわからない。
  3. どの測定項目も値を表示しない。
  4. キャリブレーション設定ができない。
  5. Ts DMM Viewerとの接続(R6441AではRMT表示)しているが、測定データを吐き出さない。シリアル通信が一部失敗している模様。"*IDN?"をTera Termで送信しても無反応。




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