ADVANTESTの古いデジタルマルチメータを購入して、データーロガーにもなるフリーソフトTs Digital Multi Meter ViewerでPCにリモート接続してみました。
多機能過ぎて、使い方が分からないことばかりですが、マニアルを見ながら少しずつ使えるようにしていくつもりです。
経緯
このまえから、急にデジタルマルチメータ(以下、DMM)が欲しくなり、しばらくの間、ネットで情報を調べていました。ハンディタイプとデスクトップタイプがありますが、欲しくなったのは安価購入ができそうな型落ちデスクトップタイプです。
発端は、このブログ(トホホな「ジャン測」修理記 その③ ~ADVANTESTマルチメータ R6551編~)を偶然見たことによります。高価な計測器でも昔のものなら安価に入手できるし、ばらすことも躊躇なくできそうです。
ハンディ型では、ANENG AN870(\4k)、HP-90EPC(\4K)、UNI-T UT61E+(\12.6K)、OWON BT41(\8.7K)といった比較的高精度なタイプもあります。AN870以外はUSBとかBluetoothでPCにつなぐこともできるようです。何よりも接地スペースを考えなくても良いのがメリットです。デメリットは思っている価格よりも高めです。(Aliexpress価格でも)
旧型型落ちデスクトップタイプの特徴は、次の説明が私の気持ちそのもので、その魅力に惹きこまれました。不安なことは、古い物なのでそれなりに精度が劣化していたり、調子が完全でなかったりで修理が必要な場合もあることです。私は修理できるような知識や経験は残念ながら持っていません。気に入った機種がなかなか落札できないこともあって、思いは新品ハンディタイプに傾いていました。
廉価なテスターと違って桁違いに高い精度での測定ができること、高精度で1秒間に数十回というサンプリングができること、ACVレンジの周波数特性がアナログ電子電圧計並みに優れていること(100kHz超まで実用になる)、そしてこれらデータをPCに取り込むことができることなど、値段だけのことはあるなあと思わせるものが(一応)あります。但し、アマチュアにとっては使わない機能がほとんどかも。新品は大変高価ですが、校正して1~2年以内の状態の良い中古がおすすめです。オークションに多数出ています。引用元:私のアンプ設計マニュアル / 基礎・応用編 測定器その1 (アナログテスターとデジタルテスターとLCRメーター) ぺるけ氏
あるとき、R6552という機種が某オクで目にとまり、運よく落札できました。元々、R6551を狙っていたので、R6551の2ch版かと喜んで落札した次第です。後から調べると2ch版ではなく後継機のようでした。
仕様(抜粋)
抜粋しただけでも、私には何を言っているのか意味不明の項目が随所に見られます。
R6552は、最大表示“319999”(5桁半)、フル・リモートのGP-IBおよびRS232を標準装備した、システム・ユース/ベンチ・ユースに適したデジタル・マルチメータです。・直流電圧/電流、・交流電圧/電流、・4線/2線式抵抗、・ロー・パワー4線/2線式抵抗、・(AC+DC)交流電圧/電流、・周波数、・ダイオードの測定機能を有しています。アドバンテスト独自のマルチスロープ積分方式のA/D変換方式を採用し、高速/高精度の測定を実現しています。交流電圧/電流は、TrueRMS(真の実効値)方式であり、(AC+DC)交流電圧/電流では直流分を含めた歪波の真の実効値測定ができます。測定サンプリングは、従来のFAST/MED/SLOWに加えて、BURST、LONG-ITを新機能とし装備しています。●最大表示 “319999”●高感度測定 直流電流測定0.1μV、抵抗測定100μΩ●サンプリング・レート 最高 1000回/秒 (BURST測定時)●高確度直流電圧 ±0.01% of rdg(/年間)交流電圧 ±0.06% of rdg(/年間)直流電流 ±0.05% of rdg(/年間)引用元:ADVANTESTカタログ ”R6552デジタル・マルチメータ多彩なアプリケーションでマルチに使える5 1/2桁DMM”
素性確認
その辺にあったものを使ってHiとLoをショートさせて、とりあえず簡単に測れるものだけ測ってみました。DC電流
2.2uA:この数値がでる意味もわからないので、こんなものなのだと思い納得です。AC電圧
2線式抵抗
4線式抵抗
内部確認
冒頭で引用したブログでは、電解コンデンサの液漏れが報告されていたり、R6441を整備した他のブログではメモリバックアップ用の電池の液漏れが報告されていました。
これらを調べてみようと中を開けてみました。底の架台を固定している2本のねじを緩めると、外箱はすっぽり手前に抜けてきます。なかは基板や部品はほこりをかぶっていることもなく、とてもきれいな状態でした。ルーペを使って隅々を見ましたが、焦げ付きやハンダクラックなども全くありませんでした。劣化している様子は見られませんでした。
校正シールはありませんでしたが、外側には管理番号ラベルが張られている個体でしたので、どこかのしっかりした企業/研究機関で使われていて、定期的な校正やメンテも行われていた個体かなぁと期待してしまいました。真実はどうでしょうか。
内蔵バッテリを探しましたが、見当たりません。Googleで探した資料を読むと、この機種は不揮発性のメモリが使われているので、バッテリは不要のようです。
外観
リモート接続
情報を集めているとき、RS232Cで接続できるビューワソフトがあることを知りました。Ts Digital Multi Meter Viewerというフリーソフトです。
オークションではGPIBが搭載されている個体が人気で比較的高値で落札されています。GPIBはちょっと前ならデフォルトの計測器の接続方法なので、前述のソフトを知る前は私もこの接続ケーブルをArduinoで自作しようと思っていました。
接続ケーブル
Ts Digital Multi Meter ViewerのHPに動作確認済みの機種としてR6552が出ています。(ラッキーでした。)さらに接続方法の説明がありました。この説明によるとRS232CをUSBに変換するケーブルがあるようです。クロスケーブルを購入する必要があります。
RS-232C通信のみサポートしています。パソコンとの接続にはクロス(ヌルモデム)ケーブルを使用します。 USBシリアル変換器を使用する場合はクロスケーブルを間に挟むかシリアルリバースアダプタを使用するか、 その他、何らかの方法で RX と TX を入れ替える必要があります。 通信条件としてボーレートは任意のものを選択できますが、それ以外の設定は工場出荷時設定である no parity, 8 data bits, 1 stop bit, no flow control に設定してください。 また、トークオンリー機能は必ず OFF にしてください。使えそうなケーブルがAmazonにありました。
ドライバはwindows 10ならUSBにつなぐと自動でインストールされました。インストールが終わるとCOM port #5を使いますとメッセージがでるので、ポート番号を覚えておきます。
R6552 取説(接続手順)
取扱説明書はググっても出てこなかったのですが、ADCMT(ADVANTESTの分割会社)のHPから、ダウンロードできました。リモート接続するには、「インターフェース・キー」でGPIBかRS232Cかを選択する必要があります。
RS232Cを選択
RS232Cの設定
通信条件としてボーレートは任意のものを選択できますが、それ以外の設定は工場出荷時設定である no parity, 8 data bits, 1 stop bit, no flow control に設定してください。 また、トークオンリー機能は必ず OFF にしてください。
4. "H" 出力データのヘッダーをONにする(OFFは"_")[ENTER]を押す
5. "_" トークオンリをOFFにする(ONは"O")[ENTER]を押す
6. "9600" ボーレイトを9600にする(何でも良い)[ENTER]を押す
7. "8" データー長を 8 bits dataにする(8/7)[ENTER]を押す
9. "no" no パリティにする(no/odd/En)[ENTER]を押す
10. "1" ストップビットを 1 stop bitにする(1/2)[ENTER]を押す
11. "no" エコーモードをOFFにする(on/oFF)[ENTER]を押す
12. "SCI on" 最後にSCI onと表示されるので、[ENTER]を押す
PC上のTs Digital Multi Meter Viewerから接続
Digital Multi Meter Viewerで「CONNECT」をクリックでDMMとPCが繋がります。切断は「CUT」をクリックした後にDMMの[ENTER]を押すようです。(正確なところはわからないのですが、こうやったらできました。)
接続の様子(動画)
1HzのDC信号を流して、3者の表示を動画に撮ってみました。サンプリング・レートが、” 最高 1000回/秒 (BURST測定時)”となっているのですが、BURSTの設定が分からないのでFASTにしています。オシロ波形をイメージしていましたが、随分違います。ゆっくりとした変化をとらえるものですね。