はじめに
この前にLTspiceで机上検討した帰還型(NFB)安定化電源について、もう少し思索を重ねます。LTspiceの勉強にWebを見て回っているときに次の記事を見つけました。これを見ると温度特性を工夫する余地がありそうなので、深堀りしてみます。
これによると、ツェナーダイオードを流れる電流を1mAにすると良いみたいです。現状では、3.9Vのツェナーダイオードに約0.8mAの電流を流す計算です。
ツェナーダイオードの温度特性についてはこのような記事もありました。電圧についての記載ですが、電流については触れられていません。
ツェナーダイオード(定電圧ダイオード)のツェナー電圧は温度によって変化します。温度特性で特徴的なのはツェナー電圧の大きさによって、正の温度係数を持つツェナーダイオードもあれば負の温度係数を持つツェナーダイオードもあることです。具体的には、ツェナー電圧が5V付近を境界とし、5V付近よりもツェナー電圧が高いものは正の温度係数を持つため、温度が上昇するとツェナー電圧が増加します。一方、5V付近よりもツェナー電圧が低いものは負の温度係数を持つため、温度が上昇するとツェナー電圧が減少します。また、ツェナー電圧が5V付近のツェナーダイオードは正の温度係数と負の温度係数がお互いに打ち消し合うため、温度変化が小さくなります。
これらを予備知識として、LTspiceでパラメータスタディをやってみます。
ツェナーダイオードは手持ちの中から5.1Vの1N4733を使います。このとき、
$$ \begin{aligned} Vout &=Vz \times\left(1+\frac{R 1 + R 5}{R 2 + R 3}\right)&=5.1 \times\left(1+\frac{520}{332}\right)&= 13.1\\ \end{aligned} $$
となりますので、この分圧抵抗でシミュレーションします。
出力電圧の温度特性
4つ並べた波形は上から、ツェナーダイオードに流れる電流、出力電圧、オペアンプ入力の電位差、オペアンプ出力電圧です。ツェナーダイオードの電流制限抵抗を4.7, 5.1, 6.8, 10kΩで計算した結果、6.8kΩでは温度20度以上でほぼフラットな温度特性を得られました。
ツェナー・ダイオードの流れる電流を1mAにすると温度係数が最小となる
5Vを境に温度係数が正負に切り換わることは上記の引用に書かれています。これが温度係数を最小にする電流1mAに相当するとCQ出版社の引例に示されているのですが、このことが他のツェナーダイオードでも当てはまるのかを調べてみます。そのため、引例の図2と同じ温度を振ったシミュレーションを2種類のツェナーダイオードで行ってみます。
同じように温度係数がゼロとなるポイントが存在し、そのときのツェナー・ダイオードの電流は1mAでした。
さらに、1N473*シリーズのツェナーダイオードを追加してみます。
まとめ
- 電圧生成用のツェナーダイオード: 1N4733
- ツェナー電圧: 5.1V
- 分圧抵抗比: 1.57 (520Ω / 332Ω)