4線式抵抗測定のためにケルビンクリップを作る

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labelelement label計測器

DMMで1Ωとか、2Ωの抵抗を普通に測ってみるとずいぶん違った値になります。

測定する抵抗が小さい場合、DMMから抵抗までのリードでの抵抗が無視できなくなるのが、DMMでの測定値が違う理由です。その対策として、4線式(4端子式)抵抗測定があり、持っているDMMでもそのモードが選べます。

引用元 http://www20.tok2.com/home/daisuken/tr6552.html

4線式(4端子式)抵抗測定

測定原理

4線式の測定原理は、低い抵抗値を4端子法で測定する方法(1) が詳しくてわかりやすかったです。

超簡単に説明すると、DMMでは抵抗の測定にオームの法則 R = V  / I を使っています。2線式では、V と R を同時に2本のテストリードで測るのですが、4線式では V の測定に2本のリードを使い、I の測定に別の2本のリードを使います。2線式で測定される V は、測定経路を流れる電流がもたらす電圧降下の分だけかさ上げされます。 一方、4線式では V の測定経路には電流がほとんど流れないので、正確な V が測定できます。

4線式では弊害として、抵抗にリードを4本接続しなければなりません。先端にワニ口クリップを付けたリードを4本用意して、これを抵抗の両端に2本ずつつ繋げれば、4線式の抵抗測定ができます。4本繋げるのが煩わしいので、抵抗の両端に一本づつ繋げれば、それで済むようにクリップを工夫したものがケルビンクリップです。

ケルビンクリップ


2個の電極を絶縁物で挟み、測定部である先端部だけが試料に接触するような構造になっている。これを二組使用したものをケルビンクリップという。
4端子法での接続例を図2に示す。(用語集:2端子法・4端子法
図2 ケルビンクリップの接続例
引用元:エヌエフ回路設計ブロック ケルビンクリップ

これの付いたテストリードを買うと万札が何枚か飛びます。秋月にはクリップが単体で売っていますがペアで揃えると約2,000円かかります。あくまでも自分で満足するための1Ωとか、2Ωの抵抗測定なので自作します。自作はここの記事(ダイソーのスプリングクランプでケルビンクリップを自作)が詳しいです。
ネット上に上がっているケルビンクリップは全てが洗濯ばさみ状のものなのですが、自分はIC クリップで作るイメージが頭の中に出来上がりました。HpとHc 2端子の独立を洗濯ばさみ式よりも容易に構成できると思います。ただし、抵抗のリードを挟んだときに第1接点と第2接点がショートしないように微妙な調整がいるかもしれません。


接点の構成については、参考記事の下記の部分が気になります。特に太字箇所の説明です。通常は2つ接点が接触していても、試料を挟む前と試料を挟んだときに独立(ショートしていない)していればいいのでしょうか?
市販されているケルビンクリップを見たことがないのですが、試料を挟んでいないときは両接点が接しているように思います。

下図のようにHcとHp、LcとLpをそれぞれ予め結合しておくと、2本のプローブ(クリップ)でいいようにも思えるのですが、それでは、HcとHpおよびLcとLpとの共有インピーダンスが生じ、また接触抵抗の影響を受けてしまい、結局は四端子法とは言えないものにたってしまいます。


やはり、HcとHp、LcとLpは、それぞれ最後の最後まで独立しておく必要があるのです。
そこで、ケルビンクリップなるものが必要になるのです。引用元:ABCDEFG 大人の電子工作 ダイソーのスプリングクランプでケルビンクリップを自作

製作過程

第2接点は、壊れたICクリップの接点を利用して、先端を L字に曲げました。最初は下図の長さにしたのですが、ICクリップに取り付けるとしっくりこないので、次の図の長さ(約半分)にしました。



接点端子の相手側はテストピンジャックにしました。普通のテスターリード棒の先端はφ2なので、ここにテスターリード棒が直接に刺せます。
接点部の出来上がりはこんな感じです。


赤黒1ペアの完成です。

抵抗を測定するときは、こんな風になります。

2Ω抵抗を実測

測定準備:短絡確認(ゼロオーム)

抵抗を測定する前に、両リードを短絡させてゼロオームの確認をしてみました。写真のように見事ゼロΩがでました。(実際は10/10000Ω程度は変動します。写真は偶然ゼロが揃ったときのものです。)

なお、DMMの予熱のため電源スイッチを入れてから、ほぼ1時間待ちました。


2Ω抵抗の測定結果

Amazonで買った2W 2Ω の抵抗を15本測ってみました。1/2 5桁のDMMなので0.1mΩの単位まで数値が表示されます。測定していて気づいたのは、時間経過とともに数値が小さくなります。ある程度落ち着くまでに5分くらいかかります。落ち着いてからも、10/10000Ω程度の変動があります。


DMMを一晩つけっぱなしにしておいて、翌日、同じことをやってみました。落ち着くまでの時間は1分程度になりました。Ts Digital Multi Meter Viewer で時系列グラフを描くと、図のようになります。2つのサンプルの時系列波形を載せます。




再現性

バラツキの原因が測定方法にあるのか、自作ケルビンクリップにあるのか、DMMにあるのかはわかりません。DMMの電源ON後、1Hrと18Hrで、2回測定したのでそれをまとめておきます。

samplea:1Hr [V]誤差b:18Hr [V]誤差a-b [V]
11.98200.90%1.98230.89%-0.0003
21.98950.52%1.99060.47%-0.0011
31.97761.12%1.97801.10%-0.0004
41.97501.25%1.97711.15%-0.0021
51.96951.53%1.97101.45%-0.0015
61.97841.08%1.97671.17%0.0017
71.98850.58%1.98610.70%0.0024
81.97401.30%1.97301.35%0.0010
91.97801.10%1.97701.15%0.0010
101.98950.52%1.98950.52%0.0000
111.97381.31%1.97521.24%-0.0014
121.96851.58%1.97071.47%-0.0022
131.97721.14%1.97941.03%-0.0022
141.97141.43%1.97401.30%-0.0026
151.97401.30%1.97641.18%-0.0024

1回目を横軸に取り、2回目を縦軸に取りました。バラツキなく、再現性があるならば一直線に並びます。

まとめ

測定結果を含めて、自作ケルビンクリップに満足です。ICクリップは手持ちがあったので、新たにかかった費用はテストピンジャック\50 x 2個 です。費用の点でも満足です。

2つの接点同士の接触が気になっていたのですが、2W抵抗の足の太さでは問題なく測定できました。ただし、1/4W抵抗では時々接点間の接触が起きるようで、その度に挟み直す必要がありました。この部位の形状を微妙に調整すれば良いのでしょうが、挟み直せば何とかなるのでこのまま使います。

ちゃんとした値を求めると、DMMには十分な予熱時間がいるようです。

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