前報の続きです。製作した電子負荷の特性を測ってみます。
電子負荷の特性
お手本で測定している特性を同じように測ってみました。
測定方法を考えてみた
最初に思いついた方法は、負荷電圧(TP1)と負荷電流(TP5)をデーターロガーに取り込んで、電流設定用の可変抵抗の値を変えながら、一気にTP1とTP5を測定する方法です。しかし、この方法では負荷の電圧は安定化電源の設定値に一定となるだけでお手本の特性は得られません。
あらためて、お手本の「3. 電子負荷の動作原理」を読み直してみて、測定方法を再考してみました。ここに、ちゃんと測定の考え方が書かれているのを読み飛ばしていました。要するに電子負荷の動作曲線(黒)と電源の動作曲線(赤)の交わる点を求める測定方法です。
具体的には、負荷の動作曲線をVR1からVR4で設定しておき、安定化電源の設定電圧(CV値)を大きな値から減らしながら、一つの電圧条件ごとにそのときの負荷の電圧と電流をそれぞれマルチメータで読み取るという方法です。このとき安定化電源の設定電流(CC値)は測定に影響しないように十分な大きさにしておきます。
電圧一定の特性もこの方法で測定できるのか心配でしたが、安定化電源のCV値を電子負荷の電圧設定値の手前で細かく設定することで、問題なく測定できました。
このとき、CCプロセスなのかCVプロセスなのかは、どちらのLEDが点灯するかで目視確認することができます。
CV/CCモード測定結果
電圧の設定を1V、電流の設定を1000mAにした場合の特性を示します。
電流設定については、後述することが原因で電子負荷の電流設定値(TP2)とDMMで測定した負荷側の電流に差が生じています。電流の設定は1000mAですが、実際に負荷を流れる電流は2~3%ほど低くなっています。他の測定条件も同様に低めです。
おなじく、電圧の設定を2V、電流の設定を500mAにした場合の特性を示します。さらに、電圧の設定を10V、電流の設定を1000mAにした場合の特性を示します。
この条件で実際に測定した値を載せます。電圧一定の特性を測定するには、安定化電源の電圧を細かく変えている状況が確認できると思います。
お手本にならって、電圧CV制御の部分を拡大してみました。線が何本か重なっているのは、安定化電源の設定をあれこれ弄りながらここの領域の測定を行ったためです。この傾きから抵抗を求めると、27mΩになりました。お手本で説明されていることにならうと、発振防止のための10μHのコイルの巻き線抵抗が実測で28mΩでしたので、ほぼ一致しています。
CR(定抵抗)モード測定結果
電子負荷のCV、CCの設定をそれぞれ、0V, 1000mA にしておいて、安定化電源の供給電圧を変えたときの特性です。安定化電源から6Vの電圧を供給したときの値で比較してみます。CV/CCモードとCRモードでわずかに違いがあります。両モードでの回路構成上での精度なのか、測定に使ったDMMのエージング時間の問題なのか、ここでも電流がばらついています。
電流設定値より負荷電流が小さくなっている理由
電圧、電流の両設定値とも、5 1/2桁のDMMを使ってミリ単位までピタリと合わせたのですが、電流は2~3%少な目になっています。
あれこれと思考と試行を繰り返した結果、原因は次の3点にあると考えています。
- モニタ用に追加したLED電圧計のインピーダンス
- スイッチとリレーで設定値表示と負荷値表示を切り換える回路構成
- 本機の設定精度
1. モニタ用に追加したLED電圧計のインピーダンス
負荷電流はシャント抵抗間の電圧を測り、LED電圧計で電流として表示しています。利用したものはAmazonやヤフオクで入手できる下図のものです。3線式なので0.00V(0.00A)から表示できます。
1Ωのシャント抵抗間の電圧を測るのでインピーダンスが気になり、データシートなどをネットで探したのですが見つかりませんでした。電圧線とGND線の抵抗を測ったら、115kΩだったのでシャント抵抗への影響はほとんどないだろうと考え、そのまま使いました。しかし、次に示すように、このLED電圧計の有無によって違いが出てしまいました。
電源SWのon/offとか、リレーSWのon/offで回路の流れ方が変わります。このとき、シャント抵抗の値に変化がないことは確認しました。
次の表は電流を1000mAに設定した時のものです。シャント抵抗の値は変わらないのですが、LED電流計をつけると電源SWやリレーSWのon/offによって、電流設定値や負荷側の電流値が変化してしまいます。電流計(LED電圧計)のインピーダンスが何か悪さしているようです。
そこで対策として、リレーで「設定値」か「負荷電流」かを選択した後に、余っているオペアンプの1回路を使ってボルテージフォロアを構成してインピーダンス変換をしてから電流計に入力すると、うまくいきました。電圧の方はリレーで選択した後、そのまま電圧計に入れています。
3. 本機の設定精度
上記の回路修正を行った後、「設定値」と「負荷電流」を比較すると次のようになりました。ともに5 1/2桁 のDMMで測った値です。設定値が3%程度大きめになっています。
この方法で見た目が1V, 1000mAになるように調整したときの特性図を載せます。
FANの特性
安定化電源から6Vを供給し、電子負荷はCV 0Vの設定で、負荷電流を変化させたときの特性を測定します。負荷を流れる電流によりMOSFETが発熱するので、負荷電流を変えるとサーミスタ抵抗(大雑把に言えば、ヒートシンク温度)を変えることができます。
サーミスタ出力とFANモータの回転数、ならびにモータ端子間の電位差の関係は下記の諸グラフようになりました。
サーミスタ出力が高くなっていくとき、1.4VまではFANは回転しませんが、1.53Vに上がると2200rpmで回転を始めます。サーミスタ出力を下げるときは、1.53Vの2200rpmまでは上げるときと同じ特性を描きます。違いは、さらにサーミスタ出力が下がっても1.37Vで590rpmまで回転を維持することができています。
サーミスタ出力とモータ電位の関係をみると、サーミスタ出力が1.2Vを超えるとモータ電位が2.6Vほどに急増します。モータの1次側は3端子レギュレータ出力なので6Vで安定しています。よって、モータ電位の急増の原因はQ4トランジスタのコレクタ電流の急増に原因がありそうです。この原因は電気回路にあるのではなく、モータの特性が原因であろうと推定しています。その根拠は、モータのコギングトルクなどをモデル化していないLTspiceのシミュレーションでは、モータ電位の急増/急減や微増というプロセスは現れていないからです。モータ電流を測定すればコギング時の保持トルクを電流で見れたかもしれません。
さらにサーミスタ出力が増えるとモータ電位は微増する過程をへて、サーミスタ出力1.53V(モータ電位2.8V)でモータの回転が始まります。最後に載せた温度との関係より、サーミスタ出力1.53Vは50℃を少し回った温度になります。
横軸をサーミスタ出力にして、同じまとめ方で表したシミュレーション結果を下記に示します。値は異なりますが、傾向としては一致しています。
この項目の始めにサーミスタ出力と負荷電流のことを触れましたので、そのデータを載せておきます。負荷電流を変えて素早くサーミスタ出力電圧を読み取った結果です。ほぼ比例した特性になっています。サーミスタ出力に対してより早く負荷電流が立ち上がっている側が負荷電流の増加プロセスです。減少プロセスでは、サーミスタ出力が1.3~1.5Vの範囲はモータ回転が徐々に下がってきて止まるまでの過程で、図のような特性になっています。
以前に測定したデータから、サーミスタ出力とMOSFET近傍のヒートシンク温度の関係をプロットしたものを載せます。非接触温度計の値なので測定部位も固定していなくて、バラツキが結構あるのですが、このグラフから、サーミスタ出力と温度が比例関係にあるといえます。FANによる発熱対策の効果
電圧12V、電流1.2A の疑似負荷(安定化電源) のとき、FANのある/なしでの発熱状況を下表に示します。FANにより、40℃以上の温度低減効果が認められ、この条件(14W入力)で発熱を最大 50 - 27 = 23℃ に抑えることができています。