計画編:しなぷすさんの「電子負荷の製作」をフルコピーしてアレンジ

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前に中華性DC/DCコンバータの分圧抵抗をいじる改造をしました。このときはトリマー抵抗を回しながら特性を測定したのですが、そのとき電流一定にできる電子負荷があったら特性測定が楽しいだろうなぁと思っていました。そして、その時から少しずつ電子負荷を調べていました。

かなり多くの諸先輩方の製作事例を学ばせていただくなかで、電子工作用に小電流な電子負荷を作ってみようと考えました。

想定仕様
  • 電圧    ~12V 設定分解能    10mV
  • 電流    ~1A     設定分解能    10mA
  • 電流一定、電圧一定、抵抗一定の3モード


中華市販品

Amazonではかなりイメージに近いものが2.5千円程度で購入できます。それに想定よりもずいぶんハイスペックです。
  • 入力電圧範囲: DC 5.0~30.0V (逆接続保護機能付き)
  • 負荷電圧範囲: DC 1.5~25.0V(逆接続保護機能付き)
  • 負荷電流範囲: 0.00~4.00A(XY-FZ25)/5.00A(XY-FZ35)
  • 放電電力: 25W(XY-FZ25)/35W(XY-FZ35)
  • 定電流精度: ±(1%+3digits)
  • 電圧精度: ±(0.5%+1digit)
  • 保護機能: 過電圧保護(OVP)、過電流保護(OCP)、過電力保護(OPP)、低電圧保護(LVP)、過温度保護(OTP)

購入か製作かあれこれと迷ったのすが、作るプロセス自体が楽しいので自作することにしました。

お手本をまねて計画

基本は電流一定の制御をすればいいことは分かったですが、回路やパラメータを設計できるだけの知識と経験はなく、作ってみたいという意欲だけです。下記のブログで紹介されている電子負荷が 0.5A 10V 2.5W の仕様で電流はmA単位まで設定できそうです。
しなぷすのハード製作記 電子負荷の製作

電子負荷の製作(1)

自作した2.5W、500mAの小型電子負荷の紹介です。電流負荷としてだけでなく、定電圧負荷としても使えます。電子負荷の特性も掲載。


ブログ記事では回路図/BOMや製作ノウハウも詳しく説明されており、繰り返し読むうちに自分でも作れそうな気になってきます。そこで、これをそっくりまねてみることにしました。それに加えて、自己流のプラスアルファもやってみたいとの興味もあります。

シミュレーションで回路を理解する

紹介されている回路をLTspiceに落とし込んで、パラメータを振りながら回路を理解しました。3端子レギュレータで基準電圧を作り、その基準電圧を分圧してオペアンプに入力しています。

定電流モードと定電圧モードの2ケースについて、詳細は上記引用の「電子負荷の製作(3)」で詳しく解説されていました。

電子負荷の製作(3)

自作した2.5W、500mAの小型電子負荷の動作原理を解説しています。発振対策のための位相補償の方法も説明しています。


この解説を読みながらLTspiceで検証してみることで、オペアンプを使った定電流回路と定電圧回路をおぼろげながら理解できました。オペアンプのLMC6482はTIにPSpiceのモデルがあったので、それを利用しました。その他の素子も挙動を理解するためにBOMで指定されたものに合わせました。色々とパラメータを振ってみて、引用のお手本で説明されている事柄をLTspiceで確認することができました。



オペアンプ選定

オペアンプのLMC6482​AINはもう売っていないみたいです。そこで、低オフセット、低バイアス、レールtoレール(出力)が特徴(おそらく、しなぷすさんの回路の狙い)なので、代替品を秋月のレールtoレールオペアンプから探してみます。設定値どうりに定電流制御するためには「オフセット電圧」がポイントになるらしいので、Marutu オペアンプ(OPアンプ)の種類と使い分け&選び方の「オフセット電圧」の項を参考にしてオフセット電圧を計算します。

MCP6492T-E/OT、MCP602-I/P、MCP6022-I/PがLMC6482​AINと同程度のオフセット電圧になりますが、動作電圧が~5.5/6Vと低いです。NJU7062Dは動作電圧が3~16Vですが、出力電流が100uAと微小信号を増幅が用途のようで本用途にはNGです。

オリジナルのオペアンプLMC6482は動作電圧が3~15.5Vと十分なのですが、ピックアップしたオペアンプはどれもそこまでの動作電圧に対応していません。ところで、定電圧モードのときの設定可能な電圧上限は3端子レギュレータで得られる出力電圧で決まるようなので、できるだけ電圧を確保したいと考えました。

そこで、3端子レギュレータはLM7806 にして、動作電圧6Vで価格\70のMCP602-I/Pを使ってみることにしました。事前に確認すると使用する個体のLM7806 の出力は5.95Vでしたので、何とかMCP602でやりくりできそうです。

オペアンプ
入力オフセット電圧VIOバイアス電流IBオフセット電圧動作電圧 V出力電流
mA
Price
VAE0[mV]
CMOSLMC6482AI1.35E-034.00E-122.69243-15.530mA
CMOSLMC6442AI4.00E-034.00E-127.9924
CMOSLMC6462AI1.20E-031.00E-112.381
CMOSOP21777.50E-052.00E-09-3.65
CMOSMCP6492T-E/OT1.50E-031.00E-122.99812.5-5.515mA
CMOSMCP602-I/P2.00E-031.00E-123.99812.7-622mA¥70
CMOSMCP6022-I/P5.00E-041.00E-120.99812.5-5.530mA¥170
CMOSNJU7062D2.00E-031.00E-123.99813-16100uA
CMOSNJU7095D4.00E-031.00E-127.99811-5.5
CMOSNJU7043D1.00E-021.00E-1219.99811.8-5.540mA
CMOSNJU77552G5.00E-031.00E-129.99811.8-5.540mA売り切れ


MCP602のspice modelはMicrochip Technologyから入手できるのですが、このモデルを使うと下記のエラーがでます。海外のサイトで同じようなトラブル相談がされているのですが、解決策がわかりません。



手当たり次第に情報を探していると、ここにある古いバージョンのspice model (REV D: 17-Jul-02, KEB)で動くようになりました。Microchip Technologyから入手できる版はREV E: 27-Aug-06, HNV で、動いたREV D の改良版なのですが、なぜかエラーがでます。正確には言えませんが、Microchipオペアンプは他のモデルでも結構トラブル相談がネットに上がっています。

自己流の改造箇所

しなぷすさんのオリジナルに対して、変更や追加した内容を列記しておきます。
  1. 3端子レギュレータ変更:LM7806
  2. オペアンプ変更:MCP602-I/P(秋月)
  3. 最大電流を1Aへ増強:手持ちのヒートシンクだと熱的にゆとりがありそうだったので最大電流を増強
      • パラレル配置のシャント抵抗を2Ω、2Wに変更
      • VREF1の分圧抵抗R1を68kΩ//68kΩで34kΩに変更
  4. VREF1(TP1)の表示を2倍に変換(実際の電圧)した出力TP6を新設:オペアンプLM358で2倍に増幅させる
  5. 定抵抗モードを追加:ジャンパーで回路を切り換える
  6. 電流表示用と電圧表示用にそれぞれ7セグLEDを設置
  7. 電流と電圧は設定値と負荷値を切り換える:7セグLEDの表示をトグルスイッチで変更
  8. メインスイッチを追加
  9. サーミスタ方式のFANコントローラを追加

これを反映させた回路をKicadで描いてみました。部品レイアウトと配線を検討するためです。





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