中華製トラッキング電源

published_with_changes 更新日: event_note 公開日:

labelelement labelLTspice label電源

Aliexpressですごいのを見つけてしまいました。こんなにもおいしさてんこ盛りで、なんと、送料無料の700円。買わないオプションはあり得ません。

トラッキング電源を3端子レギュレータで作る計画は方針転換します。これを早速入手して、実験用/電子工作用のトラッキング電源をつくることにします。ACアダプタ1個で実現できることが最大の魅力です。

中華製DC/DCコンバータ

概要


電力に制限はありますが、DC入力をブーストバックできるので、下記表のように3.7Vの入力に対して最大出力24Vまで出せると商品ページに紹介されています。これならトラッキングできる正負電源として、実験用/電子工作用に十分使用できそうです。

出力24v/± 24v


なぜか、怖い注意書きがあります。

  • モジュールの起動電流は、動作電流の2.5〜3倍です。
  • 1uf-10uf mlcc(積層セラミック)コンデンサを増やすと、起動電流が減少します 。

このモジュールにはXL6019というスイッチングレギュレータが使用されています。同じXL6019を使ったモジュールで実験されている動画がありました。「一瞬でも5Aを超えると壊れる」という内容です。実験電源ならば、コンデンサ追加の起動電流対策はmustのように思います。


仕様

Input voltage 3.6~30V,
Output ±3~±30V adjustable
Maximum output power: 20W 
Conversion efficiency :69-88% (datasheetでは、Vin 5Vで min85%でした)
Quiescent current(消費電力): 3mA
 
20W DC-DC Boost-Buck Converter working frequency 180KHZ.
Operating ambient temperature : -40~+85 Degrees Celsius
 
Size : 60 x 34 x 15mm
Weight :  33g(With terminal), 29g(no terminal)
 
High efficiency up to 88%
Built in Frequency Compensation(周波数補償)
Built in Soft-Start Function(ソフトスタート機能?怖い注意書きは何なんでしょうか?)
Built in Thermal Shutdown Function(温度保護)
Built in Current Limit Function(電流制限)

型式:DD39AJPA

現物とほぼ同じ構成の回路図がXL6019のdatasheetに載っていました。スイッチング電圧をトランスで変換して正負電圧を得ているようです。


DC Regurator :XL6019 product by XLSEMI

このスイッチング・レギュレータのXL6019はAnalog Devices社のLT1170とよく似ています。

XL6019LT1170
datasheetdatasheet
タイプスイッチング・レギュレータ
機能降圧、昇圧、フライバック、フォワード、反転、およびほぼ全てのスイッチング・トポロジーで動作
入力電圧 [V]5~403~40
スイッチ出力電圧 [V]6075
スイッチ出力電流 [A]55
Reference電圧 [V]1.251.244
スイッチング周波数 [kHz]180100
PackageTO263-5LTO220-5L


LTspiceでシミュレーション

デフォルトでspice modelが備わっているLT1170を使って、昇降圧と正負電圧出力の状況をシミュレーションしてみました。回路構成と個々の要素のパラメータ値は実機を測定した値に合わせています。




入力 5V

電源電圧5Vを入力して、負荷は±5, 9, 12, 15, 24Vになる条件で計算しました。昇圧のケースです。

最大出力20Wなので、これ相当になるように正負で2等分(10W)となる電流が流れる負荷抵抗としました。XL6019の効率は考慮できていませんので、商品ページに示されている電流よりも大きな電流が流れています。





入力 12V

次に、電源電圧12Vを入力して、負荷は±5, 9, 12, 15, 24Vになる条件で計算しました。降圧と昇圧のケースです。


応答性は良くなくて、24V出力では安定するまでに(LT1170で)0.2secほどかかるようです。

リップル

この条件で出力のリップルを見ると、次のようになりました。リップルの周波数はだいたいスイッチング周波数100kHzです。リップルの様子はレギュレータが違うのであくまでも参考です。

入力電圧24V
+24V 出力-24V 出力
電圧リップル p-p [mV]15088
電流リップル p-p [mA]13075


起動電圧/電流のオーバーシュート

起動電流のオーバーシュート対策用のコンデンサは、回路図のC10です。元からついているコンデンサは実測で580nFでしたので、この容量と10uFで比較してみます。元々、LT1170を使ったシミュレーションモデルでは起動時の電流サージらしい現象は出ていないので、10uFにして立ち上がりが緩やかになる違いしか出ませんでした。


LT1170のexample回路ではオーバーシュートあり



赤0uf, 青 0.01uF, 緑 0.1uF です。この結果で言えば, LT1170は0.1uFあればオーバーシュートは起きていません。



起動時のオーバーシュートをオシロで観察

気になるので、オーバーシュートの状態をオシロで観察してみます。入力電圧をステップ状に加えるためと、負荷は1/4Wの抵抗を使うため、写真赤ボタンのプッシュスイッチで供給電圧を一瞬だけONするようにしました。また、C10コンデンサに並列で容量追加できるようにブレッドボード上に配線を引っ張てきました。

測定条件は、入力電圧 5V、±12V出力、出力負荷100、200Ω(120、 60mA)です。


入力電圧を黄色で示します。オーバーシュートは起きていません。(x軸:2ms/dev y軸:5V/div)

±12V出力の様子です。C10追加のコンデンサはなし。オーバーシュートは起きていません。時定数 17.5ms(x軸:20ms/dev y軸:5V/div)


C10 +1uF 追加。時定数 31ms(x軸:20ms/dev y軸:5V/div)

C10 +10uF 追加。時定数 185ms(x軸:200ms/dev y軸:5V/div)

入出力の変換効率

1条件だけですが、入出力から効率を出してみます。入力電圧が小さいときは効率が悪いみたいです。

入力+ 出力- 出力電力 [W]効率
電圧 [V]電流 [A]電圧 [V]電流 [mA]電圧 [V]電流 [mA]入力側出力側[%]
4.361.0911.8111911.441194.752.7758%

まとめ

FBラインの追加コンデンサが無くても出力電圧にオーバシュートは起こりませんでした。

最後になって気づきました。下記の注意書きがある商品ページに載っているモジュールの写真にはFBラインのコンデンサが写っていません。購入したものはこのコンデンサ(1uF)が追加されたオーバシュート対策品でした。

  • モジュールの起動電流は、動作電流の2.5〜3倍です。
  • 1uf-10uf mlcc(積層セラミック)コンデンサを増やすと、起動電流が減少します 。



それと実験中に気づいたのですが、正負の電圧は全く同じという訳ではなく数%の違いがあるようです。原因は3つのコイルの容量バラツキだと思います。(基板にハンダ付けされたままで、LC-100Aという中華製LCメータで測って、24.xx uF でした。.xxは0.5uくらい変動しています。)

一次側とマイナス出力側のコイルを24.8uH、プラス出力側のコイルを24.5uH(-1.2%)にして、出力設定電圧を横軸にしたグラフを描いてみました。また、プラス出力側にはカットオフ周波数2kHz -60dB/decadeのLCフィルタを入れてみました。入力電圧は12Vです。

このようなスイッチング回路でも、.measコマンドと.stepコマンドを使えば横軸を正電圧にしたグラフを作ることができます。



正電圧の出力に対する負電圧の状況を見てみます。プラス出力側のコイルを小さくしてシミュレーションしたので負電圧/正電圧は1よりも大きくなっています。さらに、出力電圧が低いときは、負電圧が大きめになるようです。

また、入力電圧を降圧や昇圧するとがリップルは大きくなるようです。ただし、LCフィルタを入れると問題ないレベルに低減できそうです。





Powered by Blogger | Designed by QooQ

keyboard_double_arrow_down

keyboard_double_arrow_down