概要
2台目のデスクトップ型デジタルマルチメータとして、Advantest R6451Aをヤフオクで入手しました。Ts DMM Veiwerで使える2chのR6452Aをずーっと探していたのですが、最近は出物がありません。パッと見で、いかにも訳あり風の1ch VA版のR6451Aがしばらく出ていたのは知っていました。あるとき、ふとDIY心を触発されて、興味半分で入札したところスタート価格で落札できました。送料の方が高かったです。
この時代のAdvantestは入力ジャックのプラスチックが欠けているものをよく見かけます。設計段階の材料の選定ミスだと思います。落札品は2つの入力ジャックごとなく、代わりに内側からコードを表に引っ張ってきてBNCプラグをつけていました。幸いにも電源は入りましたが、残念ながらDC電圧を入力しても何も表示されません。予定通りですが、分解します。
内部の様子と測定
コードの先にはバナナプラグがついていましたが、それが”接続されていません”状態でした。プラスチックが割れて入力ジャックが壊れたので、何度か接着剤で補修したのだと思います。そして、最後の手段がバナナプラグ付きコードに直結させたという次第かと想像しました。
入力ジャックの機器側はギボシ端子です。その先は青いコードで基板へハンダ付けされています。コードはシールド線ではないみたいですが、フェライトコアらしきものがついています。
内蔵のバックアップ用リチウム電池は見た目きれいでした。周辺基板に液漏れの様子は見られません。コンデンサも液漏れの様子は見られません。30年前の製品にしては、ホコリや汚れも見えません。
入力ジャックとバナナプラグを繋げると、ちゃんとDC電圧が測定できました。ラッキーです。
他にも測定してみました。嬉しいことに、我が家の測定原器R6552と比べても、そこそこの値を表示しています。
修理
内容がちゃんとしていることが確認できたので、壊れている入力プラグと30年経ってるバッテリを直すことにしました。Googleで調べると、R6452Aを分解して解説している記事やバッテリ交換をしている記事が見つかりました。とても参考になります。
入力ジャック
何もない入力ジャックの穴に秋月のバナナジャックを取り付けます。穴径Φ10.5でピッタリの計算です。
作業性のためフロントパネルを取り外しました。フロントパネルは4か所のラッチでアルミフレームの円ボスにひっかけて止めてあるのですが、このラッチを起こすときに、4か所中3か所のラッチがせんべいを割るように折れてしまいました。このプラスチックは本当に強度がありません。もろくて、力をかけるとボロボロ割れます。筐体底のプラスチック枠も一部が割れてなくなっています。
バナナジャックの端子と元のジャック部品をハンダでくっつけて、絶縁に熱収縮チューブをかぶせました。これをパネルのジャック穴に軽圧入して、回りに瞬間接着剤を流し込んで完成です。補強と補修のため、パネル側の穴の周囲にはプラリペアを盛っておきました。
見た目はきれいでしたが、真下は液漏れしたものが結晶化して基板に固着していました。端子部のハンダを吸い取っても一向にバッテリが外れる気配がなく、端子に特殊な固定機構があるのかと思ったほど、しっかり基板にくっついていました。
バッテリを取り外す前にプラスとマイナス極がそれぞれ導通している場所を探して、そこにバイパスのリード線をハンダ付けしておきました。バッテリを外してしまうとバックアップされているデータが消えるのを防ぐ狙いです。
結晶化していたものを除去するには、削りとる以外に方法はありませんでした。結晶物を溶かそうと水から始めて、シリコンオフ、パーツクリーナ、ペイントうすめ液を試しましたがどれも全く効果なしで、写真のようにプラスチックのへらで根気よく削り取りました。
基板パターンの損傷が心配でしたが、大丈夫のようです。
外したバッテリのロットナンバーは92か、97と読めます。(1992/1997)
使われているICの刻印だとロットナンバーは8718..(1987年第18週)です。いづれにしろ、30年くらい前の製品だと思います。
バッテリの交換後はこのようになりました。
再起動
バッテリ交換はバイパス術で行ったので、予定では何の問題もなく立ち上がるはずでした。しかし、現実は立ち上げると、Err21(製品の設定に誤りを検出した)のエラーがでます。原因は、”バナナジャックの端子と元のジャック部品をハンダ付け”した箇所のハンダが不安定になっていたのですが、それに気づかずにあれこれ調べている過程で新バッテリ外しをしてしまいました。
バッテリが何の情報をバックアップするためのものだったかは不明です。最初の引例ではキャリブレーション以外の機器の読み取り値と設定だと推定しています。キャリブレーション値はすぐそばにある953Bと表示してある8ピンのICかも?とも言っています。googleでちょっとあたってみると、953BはMOSFETリセットICのようです。
Battery help to retain SRAM contents with instrument readings and settings. Hopefully calibration data is stored in non-volatile memory, perhaps small SOIC-8 chip with 953B marking?
ほんとのところはわからないので、キャリブレーション値は不揮発メモリにストアされていることを望むばかりです。本当に。
トラブル1
このあと、各測定モードのファンクションキー(V DCなど)を押すと、それぞれの測定モードごとに一瞬間を置いて測定待機状態になりました。そこで負荷をつなぐとちゃんとした測定(R6552とほぼ同じ測定値)をしてくれました。
トラブル2
ただ、抵抗測定(OHM)だけは、下記の画面になり抵抗をつなごうが、ショートさせようが何も表示されませんでした。原点に戻るため、バッテリ外しもやってみましたが効果なしでした。
色々なキーを押してみるのですがソフト上のロックがかかって、それが初期化できないような感覚です。キーを眺めていると、”CLER” キーがあることに気づき、
"SHIFT" に続けて "CLER" を押してから、"ENTER" がビンゴでした。
呪縛が解け、数字が表示されます。抵抗を繋げば抵抗値が表示されます。これでやっと、元どおりに回復できました。
あとでマニアルを見ると、4.2項 測定条件の初期化(イニシャライズ)があります。おなじことが書いてありました。
R6552との測定値比較
表に示した両DMMの測定値は、AUTOモードでDMM画面に表示される単位と桁数と同じに表現しています。同じAdvantestのほぼ同時期のDMMで、ともに5桁半を謳っている製品ですがR6552の方が表示桁が詳しいです。
デスクトップ型DMMの本来目的からすれば、物足りなさを感じるデータもありますが、個人の趣味目的からすれば申し分のない精度だと思います。交流の小電圧が変ですが、使うことはまずないので、問題なしです。
AC電流は使うことはまずないし、インラインにDMMを入れる治具をつくるのも大変なので見ていません。