熱解析:0-30V 3A DC PSU kit

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回路の調査と解析を行ったの0-30V 3A DC PSU kitの熱解析をLTspiceで行います。 ファンレスのヒートシンクにしたいので、その選定のためです。

解析する素子は回路図上で赤丸でマーキングしたものにします。

Q4: パワートランジスタ 2SD1047(2N3055から変更)
Q2: 制御トランジスタ SD882
R23: Q4横の抵抗 0.22Ω
R1: 入力の平滑コンデンサ排出抵抗 2.2kΩ
R2: 82Ω
U4: 24V出力の3端子レギュレータ、U3の正電源
U8: 12V出力の3端子レギュレータ、LED電圧、電流計用





過渡解析すると電力の波形は下図のようにギザギザなので、変化が安定した区間の値を積分し、それを区間の時間で割り算して消費電力の平均を求めました。単純に平均値(AVEコマンド)でも良かったような気もします。



出力用のトランジスタQ4の最大消費電力は、供給電圧と出力電圧の電位差が最大で、最大電流3Aが流れるときに発生します。つまり、出力電圧が0Vに限りなく近くて3Aの電流が流れるときです。

次に示すのでは限りなく0Vに近い条件として、負荷抵抗0.2Ω、CC電流を0~3Aに変化させたときの特性です。抵抗が0.2Ωなので負荷の電圧は600mVにしかなりません。Q4の消費電力は電流に応じて大きくなり、3Aでは50W弱の消費電力になっています。



限りなく0Vは現実的でないので、3Aで3Vになる負荷として1Ωで計算してみます。

横軸を電圧設定用の可変抵抗の比率に取って、各素子の消費電力をシミュレーションした値下記に表示します。比率が約0.2以上でCCモードが働き負荷には最大の電流3Aが流れます。このとき各素子の消費電力も最大値で一定です。

各素子の消費電力を読み取ると、次のようになりました。ヒートシンクが必要になるのは、Q4とQ2で他は2Wクラスの素子を使えば良さそうです。

Q4: 44.5W
Q2: 2.9W
R23: 488mW
R1: 577mW
R2: 110mW
U4: 423mW
U8: 168mW



Q4の消費電力44.5Wという値は、Q4に使用を予定しているパワートランジスタの2SD1047(全定格 100W)にとっても結構大きいので、さらに現実的な使用条件を探してみます。

下図はCC制御電流を3Aにして、負荷抵抗を0.2Ωから10Ωまで変えたときの特性です。CV電圧の設定は最大30Vです。横軸を出力電圧(負荷抵抗 x 3A)で表しています。

Q4で大きな電位差を作り、それを熱に変えるので、Q4の消費電力は負荷抵抗が小さいほど大きくなります。これからQ4の消費電力の値を読み取ると、3V 3Aで42W、6V 3Aで38W、9V 3Aで33W、12V 3Aで30Wとなっています。12V 3Aで30Wを狙い目にしてみます。





4Ω負荷で計算してみます。12V 3A でQ4 32W、 Q2 2.1Wの消費電力になります。この数値で熱解析を行い、ヒートシンクのあたりを付けることにします。





熱解析


素子の最大消費電力を知れたので、これを使ってRC熱モデルで熱解析をしていきます。

パワートランジスタ Q4:2SD1047; TO-3Pパッケージ

Rth: Junction-case 1.25 (datasheet)
       Junction-ambient 50 (TO-3PパッケージのTK31J60W5の値を利用)
       sheet-heatsink 0.67(熱伝導両面テープ)
       heatsink-ambient 2 (junction温度が150℃ほどになる値)
雰囲気温:25℃
消費電力 :32Wで計算したとき、junction温度が150℃に抑えるには熱抵抗 2℃/W のヒートシンクが必要です。


Web上で探し当てた図表によると、2℃/Wの熱抵抗を得られるアルミヒートシンクの体積は、$300cm^{3}$になります。これは例えば、6cm x 5cm x 10cm のアルミブロックになります。2個のパワートランジスタ用にそれぞれこのサイズのヒートシンクが必要ですが、ちょっと大き過ぎです。FANなしだとこのサイズなので、FAN付きを考えた方が賢明です。


パワートランジスタ Q2 : 2SD882; SOT-32 / TO-126

2SD882の全損失はDatasheetによると12.5Wなので、2.1Wの使用条件は余裕です。ただし、45℃/Wのヒートシンクは必要という計算です。

Rth: Junction-case 10 (datasheet)
       Junction-ambient なし
       sheet-heatsink 2.67(熱伝導両面テープ)
       heatsink-ambient 45 (junction温度が150℃ほどになる値)
雰囲気温:25℃


秋月電子扱いの45℃/Wのヒートシンクです。



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