回路の調査と解析を行ったの0-30V 3A DC PSU kitの熱解析をLTspiceで行います。 ファンレスのヒートシンクにしたいので、その選定のためです。
解析する素子は回路図上で赤丸でマーキングしたものにします。
Q2: 制御トランジスタ SD882
過渡解析すると電力の波形は下図のようにギザギザなので、変化が安定した区間の値を積分し、それを区間の時間で割り算して消費電力の平均を求めました。単純に平均値(AVEコマンド)でも良かったような気もします。
出力用のトランジスタQ4の最大消費電力は、供給電圧と出力電圧の電位差が最大で、最大電流3Aが流れるときに発生します。つまり、出力電圧が0Vに限りなく近くて3Aの電流が流れるときです。
次に示すのでは限りなく0Vに近い条件として、負荷抵抗0.2Ω、CC電流を0~3Aに変化させたときの特性です。抵抗が0.2Ωなので負荷の電圧は600mVにしかなりません。Q4の消費電力は電流に応じて大きくなり、3Aでは50W弱の消費電力になっています。
限りなく0Vは現実的でないので、3Aで3Vになる負荷として1Ωで計算してみます。
Q4の消費電力44.5Wという値は、Q4に使用を予定しているパワートランジスタの2SD1047(全定格 100W)にとっても結構大きいので、さらに現実的な使用条件を探してみます。
下図はCC制御電流を3Aにして、負荷抵抗を0.2Ωから10Ωまで変えたときの特性です。CV電圧の設定は最大30Vです。横軸を出力電圧(負荷抵抗 x 3A)で表しています。
Q4で大きな電位差を作り、それを熱に変えるので、Q4の消費電力は負荷抵抗が小さいほど大きくなります。これからQ4の消費電力の値を読み取ると、3V 3Aで42W、6V 3Aで38W、9V 3Aで33W、12V 3Aで30Wとなっています。12V 3Aで30Wを狙い目にしてみます。
パワートランジスタ Q4:2SD1047; TO-3Pパッケージ
Web上で探し当てた図表によると、2℃/Wの熱抵抗を得られるアルミヒートシンクの体積は、$300cm^{3}$になります。これは例えば、6cm x 5cm x 10cm のアルミブロックになります。2個のパワートランジスタ用にそれぞれこのサイズのヒートシンクが必要ですが、ちょっと大き過ぎです。FANなしだとこのサイズなので、FAN付きを考えた方が賢明です。
パワートランジスタ Q2 : 2SD882; SOT-32 / TO-126
2SD882の全損失はDatasheetによると12.5Wなので、2.1Wの使用条件は余裕です。ただし、45℃/Wのヒートシンクは必要という計算です。