Bingの力を借りて、PWM コントローラ(TL494、SG3525A)の使い方を理解する

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labelelement labelLTspice label発振器

TL494やSG3525AといったPWM コントローラICを使ってみようと思うのですが、データシートを眺めてみても、私には使い方が分かり難くてなかなか呑み込めません。モーターやLEDの制御にPWMを使う以前に、これらの専用ICの使い方をLTspiceを使って理解しようと思います。

データシートでは分かり難かったことをBeingに質問したら、自分の知識レベルにはわりと分かる答えが返って来たので、備忘録としてそれもまとめておくことにしました。

TL494モジュール

Amazonで調べると、TL494とSG3525Aという専用ICをモジュールにした商品が販売されています。下記の説明も載っています。したがって、このモジュールの回路をLTspiceで理解すれば使い方が分かるだろうと思い、これらのモジュールの回路をネットで探すことにしました。

・TL494の出力 PWM 周波数は 500Hz ~ 100KHz まで調整でき、デューティ サイクルは最大 96% まで調整できます
・SG3525は78M05 レギュレータチップ、信頼性の高い基準電圧を提供します
・SG3525は2 つの高精度調整可能な抵抗、R3はデューティ サイクルを制御し、R4 は周波数を制御します
・SG3525は周波数範囲は200HZ-100KHZ調整可能です

回路図

TL494モジュールの回路図と思われるものはここにありました。  datasheetはこれです。

Spice modelとシミュレーション

LTspiceで回路を組みます。TL494のシンボルとライブラリは、LTwikiにある Bordodynov's Electronics web page のライブラリから持ってきて、所定のフォルダにおきました。

回路図とシンボル、データシート間でピン名称が少しづつ違うので、ピン番号を基準にして自分なりのシンボルに編集して使っています。



回路図を元にしてLTspiceに置き換えてシミュレーションします。シミュレーション結果と後述の各ピンの役割を照らし合わせると使い方が分かってきました。と言っても、この回路での入出力が分かっただけで他の回路を考案できる訳ではありません。


デューティ比はU2(回路図R5)で可変できます。また、周波数はU3(回路図R6)で可変できます。これは、R1+U3(同R4+R6)に制限された電流で C1(同C3)への充放電を行うことで実現しています。

各ピンの役割

Beingに「TL494の各端子の使い方を教えてください。」と尋ねたら、次の回答がありました。下線部分がデータシートにない内容で、TL494の使い方理解の手助けになります。

TL494はPWM制御回路を構築するためのチップで、以下のような端子があります1

・IN1と-IN1: エラー・アンプ1への非反転入力と反転入力です。
    このアンプはフィードバック信号とリファレンス信号を比較して、PWMのデューティ比を調整します。
・IN2と-IN2: エラー・アンプ2への非反転入力と反転入力です。
    このアンプはオーバーカレントやオーバーボルテージなどの保護機能に使われます。
CT1とCT2: BJT出力1と出力2のコレクタ端子です。
    これらはトランジスタのスイッチング動作によってPWM波形を生成します。
ET1とET2: BJT出力1と出力2のエミッタ端子です。
    これらはコモンエミッタまたはエミッタフォロワの出力構成に使われます。
CT: 発振器周波数の設定に使用するコンデンサ端子です。
    このコンデンサにはのこぎり波がかかります。
RT: 発振器周波数の設定に使用する抵抗端子です。
    この抵抗はリファレンス出力に接続されます。
DTC: デッドタイム制御コンパレータの入力です。
    この端子に電圧をかけることで、出力トランジスタのオフ時間を調整できます。
FB (FeedBack): フィードバック用の入力ピンです。
    この端子には出力電圧や電流などのフィードバック信号を入力します。
OTC (Output Ctrl): シングルエンド/並列出力とプッシュプルのいずれかの動作を選択する端子です。
    この端子に電圧をかけることで、出力トランジスタの動作モードを切り替えられます。プッシュプル動作の場合、出力制御入力を内部の 5V リファレンス・レギュレータに接続する必要があります。
Vref: 5Vのリファレンス・レギュレータの出力です。
    この端子から5V、5%精度の安定した電源を取り出せます。
・VCC: 正の電源です。7Vから40Vまでの範囲で動作します。

TL494の各端子の使い方について、詳しくはデータシート1やブログ記事2を参照してください。 


周波数の設定方法


tl494の周波数はどうやって設定するのかBeingに聞いてみました。

TL494はPWM制御回路を構築するためのチップです。PWMの基本周波数はオンチップの可変発振器によって決まります。発振器の周波数は、RT端子に接続された抵抗とCT端子に接続されたコンデンサの値によって設定できます。発振器の周波数fOSCは、以下の式で求められます¹。

$$f_{OSC} = \frac{1.13}{R_T C_T}$$

RTとCTの値を変えることで、発振器の周波数を調整できます。例えば、RTを10kΩ、CTを1nFにすると、発振器の周波数は約113kHzになります。この周波数は、PWMのデューティ比を制御するフィードバック信号やデッドタイム制御信号に影響します。詳しくは、TL494のデータシート²を参照してください。

TL494の周波数設定に関するブログ記事もあります³。そこでは、実際にTL494を使って電源回路を作る方法が紹介されています。興味があれば、ぜひ読んでみてください。

さらに、「上記の式で、1.13の成り立ちを教えてください。」とやると、

1.13という係数は、発振器の回路におけるキャパシタの充電と放電の時間を考慮したものです。キャパシタの充電時間は、以下の式で表されます¹。

$$t_{charge} = R_T C_T \ln \left( \frac{3}{2} \right)$$

キャパシタの放電時間は、以下の式で表されます¹。

$$t_{discharge} = R_T C_T \ln \left( \frac{2}{3} \right)$$

発振器の周期は、充電時間と放電時間の和に等しくなります。

$$T = t_{charge} + t_{discharge} = R_T C_T \left( \ln \left( \frac{3}{2} \right) + \ln \left( \frac{2}{3} \right) \right)$$

この式を周波数に変換すると、以下のようになります。

$$f = \frac{1}{T} = \frac{1}{R_T C_T \left( \ln \left( \frac{3}{2} \right) + \ln \left( \frac{2}{3} \right) \right)}$$

ここで、$\ln$ は自然対数を表します。この式を簡単にするために、$\ln$ の中身を掛け算に変換します。

$$f = \frac{1}{R_T C_T \ln \left( 1\right)} =\frac{1}{R_T C_T \ln\left(\frac{3}{2}\times\frac{2}{3}\right)}$$

$\ln$ の中身が 1 になるとき、$\ln$ の値は 0 になります。したがって、この式は以下のようになります。

$$f =\frac{1}{R_T C_T\times0}=\infty$$

これは、発振器の周波数が無限大になることを意味しますが、これは現実的ではありません。そこで、$\ln$ の中身を少し変えて、発振器の周波数が有限の値になるようにします。具体的には、$\frac{3}{2}$ と $\frac{2}{3}$ の両方に $\sqrt{2}$ を掛けます。すると、以下のようになります。

$$f =\frac{1}{R_T C_T\ln\left(\frac{3\sqrt{2}}{2}\times\frac{2\sqrt{2}}{3}\right)}=\frac{1}{R_T C_T\ln\left(2\right)}$$

ここで、$\ln (2)$ の値は約 0.693 です。したがって、この式は以下のようになります。

$$f =\frac{1}{R_T C_T\times0.693}\approx\frac{1.44}{R_T C_T}$$

この式は、発振器の周波数を RT と CT の値で表すものです。しかし、この式では係数が少し大きすぎるため、実際の回路では発振器の周波数が予想よりも低くなります。そこで、係数を少し小さくして調整します。具体的には、係数を約 0.79 倍して 1.13 にします。すると、以下のようになります。

$$f =\frac{1.13}{R_T C_T}$$

この式は、TL494 のデータシート¹で示されている発振器の周波数の式です。この式では、RT と CT の値を変えることで、発振器の周波数を約 1kHz から 300kHz の範囲で設定できます¹。この周波数設定は、PWM のデューティ比やデッドタイムなどのパラメータに影響します。したがって、TL494 を使って電源回路を作るときは、発振器の周波数を適切に設定することが重要です³。


ここまでわかると、自分にとっては十分です。ただし、$\sqrt{2}$ を掛けるくだりからの説明は意味不明です。理論値を実測値に合わせるための経験係数なのでしょうか?

ちなみに数式での周波数は48.5kHzですが、シミュレーションでは47kHzでした。

SG3525Aモジュール

回路図

このモジュールも素人には、datasheetよりもモジュールの回路図の方が分かりやすいです。

Spice modelとシミュレーション

同様にピン番号付きのシンボルに変更しました。

回路図どおりにLTspiceで回路を組んでシミュレーションします。



各ピンの役割

BeingとChatGPTの両方で調べ、整合を取ってまとめてみました。間違ってる可能性もあります。
  • INV No.1ピン :エラー増幅器反転入力(IN-)ピン。フィードバック電圧を入力します。通常は、出力電圧を分圧して入力します。
  • NI No.2ピン :エラー増幅器非反転入力(IN+)ピン。基準電圧(5V)の一部を入力します。通常は、内部基準電圧に接続されています。
  • SYN No.3ピン:オシレータ同期(SYNC)ピン。オシレータの同期信号を入力します。他のSG3525と周波数を同期させるために使用します。
  • OSC No.4ピン:オシレータ出力(OSC OUT)ピン。オシレータの三角波信号を出力します。外部に同期信号を入力することもできます。
  • CT No.5ピン:オシレータ制御(CT)ピン。オシレータのタイミング用に外部コンデンサを接続します。オシレータの周波数は、このコンデンサの値によって決まります。
  • RT No.6ピン:オシレータのタイミング用に外部抵抗器を接続します。オシレータの周波数は、この抵抗器とCTピンに接続されたコンデンサの値によって決まります。
  • DCH No.7ピン:Dischargeピン。オシレータのタイミング用に外部コンデンサを放電するために使用されます。このピンは、オシレータ出力が高いときにグランドに接続され、オシレータ出力が低いときに開放されます。
  • SS No.8ピン:ソフトスタート(SS)ピン。起動時の出力電圧の立ち上がりを制御するために外部コンデンサを接続します。このコンデンサに充電される電圧がエラー増幅器の反転入力に加わります。
  • CMP No.9ピン (COMP): コンパレータピン。エラーアンプとコンパレータを制御し、PWM信号のデューティサイクルを調整します。
  • SHD No.10ピン:シャットダウン(SHUT DOWN)ピン。このピンに4V以上の電圧を入力すると、ICは動作を停止します。通常は、内部基準電圧にプルアップされています。
  • OUA No.11ピン:アウトプットA(OUT A)ピン。PWM信号の出力Aです。トーテムポール型の出力段で、最大400mAの電流駆動能力があります。
  • GND No.12ピン:グランド(GND)ピン。電源の負極に接続します。
  • VC No.13ピン:VCピンはPWMコントローラの動作を調整するために使用されます。
  • OUB No.14ピン:アウトプットB(OUT B)ピン。PWM信号の出力Bです。出力Aとは位相が反対です。トーテムポール型の出力段で、最大400mAの電流駆動能力があります。
  • VIN No.15ピン:電源(V CC)ピン。電源の正極に接続します。動作電圧範囲は8V~35Vです。
  • VRF No.16ピン:基準電圧(REF)ピン。内部で発生した5Vの基準電圧を出力します。外部にコンデンサを接続して安定化させます。

CMP No.9ピンとVC No.13ピンが良く分かりません。ChatGPTの答えを下記に載せます。
#9ピンは"COMP"(コンパレータ)ピンであり、コンパレータの機能を制御します。コンパレータはSG3525A内部のエラーアンプと比較器からなり、コンパレータ出力はPWM信号のデューティサイクルを調整するのに使用されます。

具体的には、SG3525Aの#9ピン(COMPピン)の主な機能は以下の通りです:

エラーアンプ出力のフィードバック制御: COMPピンはエラーアンプの出力をフィードバックし、コンパレータの入力として使用します。エラーアンプは基準電圧と入力電圧を比較し、エラー信号を生成します。COMPピンはこのエラー信号を受け取り、PWM制御回路にフィードバックします。

PWM信号のデューティサイクル制御: COMPピンを介してフィードバックされたエラー信号は、PWM信号のデューティサイクルを調整するために使用されます。エラーアンプがエラー信号を検出すると、COMPピンの電圧が変化し、PWM出力のデューティサイクルが調整されます。これにより、制御対象の電圧や電流が所望の値に維持されるように制御できます。

出力の安定性向上: COMPピンを適切に接続することで、SG3525Aの出力を安定させることができます。エラーアンプとコンパレータを使用して、出力をフィードバックして制御することで、システムの安定性とパフォーマンスを向上させることができます。

COMPピンの具体的な接続と設定は、アプリケーションや回路の要件に応じて異なる場合があります。データシートや製品のマニュアルを参照して、正確なピン接続と設定情報を確認してください。また、SG3525Aを使用する際には、適切な設計ガイドラインに従って回路を設計することが重要です。

SG3525Aのピン#13はVC(Voltage Control)ピンとして知られており、主に制御電圧(Control Voltage)として機能します。VCピンはPWMコントローラの動作を調整するために使用されます。具体的な機能は以下の通りです:

VCピンは、外部の制御信号を受け入れるピンで、通常は0Vから5Vの範囲の電圧を許容します。この電圧はPWM出力のデューティサイクルを制御します。VCピンに印加される電圧に応じて、PWM信号のデューティサイクルが変化します。一般的に、VCピンに高い電圧を印加するとデューティサイクルが増加し、低い電圧を印加するとデューティサイクルが減少します。

VCピンを使用することで、SG3525Aを外部から制御でき、所望の動作を実現できます。例えば、出力電圧や出力電流を制御するためにVCピンを使用することがあります。デューティサイクルを調整することで、出力を安定化させたり、所望の出力値に合わせたりすることが可能です。

VCピンの正確な動作と制御方法は、SG3525Aのデータシートや製品のマニュアルに詳細に記載されています。具体的なアプリケーションに応じて、VCピンを適切に設定して使用することが重要です。

周波数の設定方法

SG3525のPWM周波数の設定方法を教えてください」とBeingにたずねます。

SG3525はPWM制御回路を構築するためのチップで、発振器の周波数を設定するためにはRTとCTという2つの端子を使います。RTには抵抗を、CTにはコンデンサを接続します。発振器の周波数fOSCは、以下の式で求められます¹。

$$f_{OSC} = \frac{1}{R_T C_T \ln (4)}$$

この式からわかるように、RTとCTの値を変えることで、発振器の周波数を調整できます。例えば、RTを10kΩ、CTを1nFにすると、発挖器の周波数は約72kHzになります。この周波数は、PWMのデューティ比やデッドタイムなどに影響します。詳しくは、SG3525のデータシート²を参照してください。

SG3525のPWM周波数の設定方法に関するブログ記事もあります³。そこでは、実際にSG3525を使ってインバーター回路を作る方法が紹介されています。興味があれば、ぜひ読んでみてください。

$f_{OSC} = \cfrac{1}{R_T C_T \ln (4)}$ この式の導入について教えてください。」とやると、
前述したTL494の周波数導入過程と同じ説明になり、$f =\cfrac{1.13}{R_T C_T}$ が周波数の設定式ですと説明されます。

そこで、「$f_{OSC} = \cfrac{1}{R_T C_T \ln (4)}$  が、$f =\cfrac{1.13}{R_T C_T}$ に変わってしまったのはなぜですか?どちらが正しい?」と尋ねたときの答えが下記です。理論式と言っている式の導入も論理的ではなく、どちらも正しいという曖昧な結論にしかなりませんでした。

いづれも、ピタリと合うことはないので、$f =\cfrac{1.13}{R_T C_T}$ を使って目安にするのが良さそうです。

$f_{OSC}​=\cfrac{1}{R_T C_T \ln (4)}$​と $f=\cfrac{​1.13}{R_T​ C_T}$​は、どちらもSG3525の発振器の周波数を表す式です。しかし、前者は理論的な式であり、後者は実際の回路における調整された式です。理論的な式では、発振器の周期はRTとCTの値に比例しますが、実際の回路では、発振器の周波数が予想よりも低くなります。そこで、係数を少し小さくして調整します。具体的には、係数を約 0.79 倍して 1.13 にします。すると、発振器の周波数が実際の回路に近くなります。したがって、どちらの式も正しいと言えますが、実際にSG3525を使って電源回路を作るときは、調整された式を使う方が良いでしょう。

数式での周波数は562Hzですが、シミュレーションでは636Hzでした。

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