1作目のデサルフェータは車積してバッテリーの活性化中です。運転していての体感上の効果は感じていないのですが、もう一台の車用に2作目を作ることにしました。
1作目はシミュレーションでコンポーネント・セレクションを行ったので、2作目は実験的にコンポーネント・セレクションを行います。
つまり、実験的にパルス発生にかかわるパラメータ(555 ICのパルス設定抵抗)を決めてみます。このとき、パラメータの設定によっては発熱が気になるので、インダクターを流れる過渡的な電流を観察してみます。
コンポーネント・セレクション
構成
1作目と異なるのは、MOSFETとL2インダクターです。いづれも手持ち在庫品から持ってきてます。MOSFETは部品箱から見つけたIRLI520Nですが、スペック的には1作目の2SK2232よりも向いていそうです。L2インダクターは1作目の許容電流が1.9Aで気になっていたので、3Aのトロイダルコイルにグレードアップしました。
R3抵抗
回路構成は1作目と同じにします。各デバイスは次のとおりです。
ONパルス時間
1作目の検討過程で、バッテリーのリギング(peak to peak)電圧はONパルス時間に関係があることが分かっています。ONパルス時間を測定するにはオシロでパルス波形を表示させて、カーソルを動かして測定する作業になります。
これは結構大変なので、R3抵抗の大きさとONパルス時間およびパルスの大きさの関係を事前に測定しました。測定誤差はありますが、R3抵抗の大きさでONパルス時間が設定できることを示しています。
BATTリギング電圧
R3抵抗とBATTリギング電圧の関係を下記に示します。リギングのpeak to peak が左軸で、rms値を右軸で表しています。peak to peak に比べてrms値は一桁小さいので、主にpeak to peak を評価することにします。
バッテリーのリギング電圧(BATT peak to peak)はR3が0.5kΩより小さい領域では急増しますが、0.5kΩより大きくなるとほぼ一定の値になっています。
リターン電流
電源にはWP1236WのPbバッテリーを使いました。バッテリーのマイナス端子手前に0.1Ωのシャント抵抗を置き、戻りDC電流を測定しました。DC電流は値が変動します。数分間、観察していると、通電直後から時間とともに電流が下がってきます。そこでしばらく観察して、値が下がったときの値を測定値としました。
インダクターL1電流
インダクターL2電流
L2電流についても、前項で示したL1電流との関係と同じです。
R3が0.5kΩ付近でL2電流が最も大きくなるような特性です。2つ目のグラフでL2電流とバッテリーリギング電圧の関係をみると、正の相関がみられます。
L1電流が3Aを超えなかったのに比べ、L2電流はR3が0.5kΩの最大条件では5Aを超えています。
まとめ、その1
R3(ONパルス時間)の増加に対して、BATTのリギング電圧とリターン電流はトレードオフの関係にあります。ただし、R3が0.5kΩならリターン電流をほぼ100mAに抑えたまま、BATTリギング電圧はほぼ最大特性に近い値を得ることができます。
インダクターL1、L2を流れる電流が大きい結果として、BATTリギング電圧が大きくなるので、2つのインダクターを流れる電流に注意して部品選定を行う必要があります。
R4抵抗
R4はパルスを繰り返す周波数を決めるパラメータです。R4と周波数及びDutyサイクルとの関係を掴んでおきます。
BATTリギング電圧
値がばらつくので、R4の値を細かく変えた結果が下図です。測定上のバラツキなのか、本来、値が変動するのかは不明ですが、傾向としては、20~25kΩの範囲でなだらかなピークが見られます。
インダクターL1電流
BATTのリギング電圧と同様な傾向があり、20~25kΩの範囲でなだらかなピークが見られます。
リターン電流
まとめ、その2
インダクター電流波形の観察
インダクターL1の電流
R3: 470Ω、R4: 25kΩ (計算周波数 42kHz)の測定条件です。
ONパルスのON/OFFに伴いL1電流とバッテリー電圧にリギングが見られます。インダクターL1にチャージされた電流が一気に放出されるときのバッテリー電圧のリギングがサルフェーションの除去に効果があるらしいので、OFF時の特性に注目します。
L1にはグランド基準で939mAの平均電流を中心にして、2.5Aのpeak to peakが発生しています。グランド基準の最大値は2.2Aになります。
BATT電圧のpeak to peakは10.35Vです。
繰り返しの周波数は42kHzです。リギングの周波数は30MHzくらいになっています。1作目は4~5MHzでした。今回の実験回路と1作目との違いは、R3、R4抵抗の値とL2インダクターの電流容量なのですが、これが影響しているとは想像できません。あとで少し調べてみようと思います。
時間軸を拡大すると、BATT電圧波形に対してL1電流波形の位相が遅れているのが観察できます。
L1インダクターと同じように波形を観察します。
L2にはグランド基準で1.495Aの平均電流を中心にして、3.828Aのpeak to peakが発生しています。グランド基準の最大値は3.4Aになります。
BATT電圧のpeak to peakは10.35Vです。リギング周波数はやはり30MHzほどを示しています。
以上の検討より、各デバイスの値を次のように決めました。
ONパルス
バッテリ電圧のpeak to peakの大きさはブレットボード回路から格段に大きくなりました。リギングの電圧や周波数が変わる原因は各素子間の配線長さとか太さだと推定してるのですが、検証までは行っていません。
12Vのツェーナー ダイオードD4とトランジスタQ1によって機能する動作開始電圧を測定します。1作目では電源電圧とQ1のエミッタ - コレクタ間電流を測定したのですが、完成した回路を切断してなかにシャント抵抗を入れるのは嫌なので、2作目は電源電圧と555ICのVCC電圧(8ピン)を測定して動作を評価します。
電源電圧12.5V付近からVCC電圧が発生し始めて、電源電圧13.7VでVCC電圧12Vでほぼ一定となります。この方法では、電流で測定した1作目に比べ昇圧と降圧でのヒスはほどんど見られません。さらに、1作目の電流測定方式では電流の急増や急減を捉えることができ、動作電圧を明確に評価できたのですが、電圧方式では急増や急減がないので、おおよその見当になります。