Modulation(変調)機能の使い方をまとめておきます。デジタル変調はとっつきにくいので、感覚的に理解できるアナログ変調をまず使ってみます。
変調の基礎
変調方式(へんちょうほうしき、英: modulation method)とは、電気通信において、基本信号(搬送波)に対して、その振幅、周波数、位相などを変化させる(変調する)ことにより信号を伝送する方式である。アナログ通信のための、振幅や周波数や位相などを連続的に変化させる変調方式である。ラジオ放送などで用いられている。
引用元:【変調方式】
FY6900の変調機能
FY6900のUser's Manualを抜粋しますが、使い方の具体的な方法は載っていませんでした。
- さまざまな変調タイプ: AM、FM、PM、ASK、FSK、PSK 変調。
- Modulation機能
Function generatorの変調機能
設定については、この記事で具体的に説明されていましたので、要点を抜粋します。FY6900でも大体同じだと思います。
AM(振幅変調)
搬送正弦波による振幅変調が最も一般的な使用法です。図 1 は、AM 深度 100%、AM 周波数 100 Hz の正弦波で変調された関数発生器のグラフィック設定を示しています。元のデータの正弦波の周波数は 1 kHz です。
図1. Keysight 33600Aを使用した AMファンクション・ジェネレータのセットアップ(左)とAMのオシロスコープ表示(右) |
FM(周波数変調)
ここでは、FM 信号をシミュレートするためにファンクション ジェネレーターをセットアップする方法の例を示します。
図3. Keysight 33600Aを使用したFMファンクション・ジェネレータのセットアップ。 |
上の図 3 は、1 kHz の正弦波の周波数変調を示しています。使用される変調方式も FM 周波数 10 Hz の正弦波です。そのピーク周波数偏移は 100 Hz です。
PM (位相変調)
位相変調は、PSK (位相偏移キーイング)、BPSK (二相位相偏移キーイング)、QPSK (四相位相偏移キーイング) などのデジタル変調技術を通じて、デジタル データ送信に広く使用されています。Wi-Fi、GSM、衛星放送の伝送に使用されます。
ここでは、PM 信号をシミュレートするためにファンクション ジェネレーターを設定する方法の例を示します。
図4. Keysight 33600Aを使用したPMファンクション・ジェネレータのセットアップ |
上の図 4 は、1 kHz の正弦波の位相変調を示しています。使用される変調信号も、PM 周波数 200 Hz の正弦波です。その位相偏差は180°です。
使い方
[MOD]キーが変調機能のトリガーです。(キーを押すと既に設定されている変調が開始されます。)
CH1が搬送波(キャリア信号)になります。信号波(伝えたいアナログ信号)は、① CH2で設定することができます。あるいは、② 外部信号を使う(Back PanelのVCO入力)こともできます。
[SOUR]:図右列の[SOUR]キーを押すと、信号波をCH2/外部で切り換えできます。
[Mod-Rate]など:[MODE]により変わります。
設定内容は前項の 「図0. Modulation機能 メニュー」によります。
事例1:AM変調
信号波(伝えたいアナログ信号)を ① CH2で設定するケースでの説明です。
- [CH1]キーを押して、CH1に搬送波を設定します。
- [CH2]キーを押して、CH2に信号波を設定します。
- [MOD]キーを押して、「Modulation Mode」にすると、即座に変調された信号がCH1に出力されます。
- [MODE]キーを押すと変調モードがシーケンシャルに変わるので、「AM」を選びます。
- [PARA]キーを押して、[Mod-Rate]を有効にしてから、右のダイヤルで比率を調整します。これは前項では AM DEPTH(深度)と説明されています。100%にすると振幅がゼロからフルまで100%変化します。
変調された波形(信号)は前項の事例と同じような波形になりました。
下図のように、方形波やRamp波といった2CHの信号波形に応じた変調波形が得られます。
事例2:FM(周波数変調)
- [CH1]キーを押して、CH1に搬送波を設定します。
- [CH2]キーを押して、CH2に信号波を設定します。
- [MOD]キーを押して、「Modulation Mode」にすると、即座に変調された信号がCH1に出力されます。
- [MODE]キーを押すとモードがシーケンシャルに変わるので、「FM」を選びます。
- [PARA]キーを押して、[BAIS]を有効にしてから、右のダイヤルで比率を調整します。[BAIS]は前項の事例では「周波数偏差」に関係するものだと思われます。この値が0(ゼロ)だと周波数変調されず、大きくすると周波数変調の度合いが大きくなりました。
BIOSについて
調べると周波数偏移については、次のように定義されていました。BIASについての記載はありませんので、FY6900独自での使い方だと思います。
【周波数偏移 Frequency Deviation】周波数変調における周波数変化の幅。すなわち,周波数変調においては,変調信号に対応して,搬送周波数が変化する。したがって,変調信号入力がある場合の搬送周波数は,変調信号入力がない無変調時の搬送周波数からずれる。このずれの幅の周波数が周波数偏移である。周波数偏移を変調信号周波数で割った値を変調指数という。変調指数は,位相変調における位相偏移の振幅に相当している。引用元:世界大百科事典 第2版 「周波数偏移」
【周波数偏移(Frequency Deviation)】周波数偏移は、キャリア波形(搬送波)と変調波からのピーク周波数偏移です。キャリア周波数は周波数偏移(frequency deviation)以上である必要があります。変調周波数とキャリア周波数に対するピーク偏差の関係を以下に示します。ピーク偏差 = 変調周波数 - 搬送波周波数キャリア周波数はピーク偏差の周波数より大きいか、 または等しくなければいけません。偏差およびキャリア波周波数の和は、設定したキャリア波形の最大周波数を超えてはいけません。引用元:テクシオAFG-3000シリーズ 取扱説明書
自分で理解するために図にしてみましたが、間違っているかもしれません。
FY6900のBIAS設定を使ってみた感じでは、BIASと周波数偏移(ピーク周波数偏差、frequency deviation)の関係は下図のようだと思います。
BIAS = 2 x 周波数偏移