Amazon購入ですが中華発送
買うときは気づかなかったのですが、見出しのとおりです。Amazonの発送履歴によると、13日にポチっとしたら16日に出荷され、21日に届きました。Aliexpressよりもずいぶん早くて値段も安かったです。
中華スタイルの梱包内容です。基板の傷付きが気になるのですが、それはさすがに別の小袋に入っていました。
- バッテリケーブルは、長さ21cmの10AWG:計算上の抵抗 0.7mΩ/本
- 電極のケーブルは、 長さ27cmの10AWG:計算上の抵抗 0.9mΩ/本
- MOSFETは、G011N04 : オン抵抗 0.9 - 1.2 mΩ, Vds 40V Id 320A (生産元はHuayi Microelectronics Co., Ltd. という中国メーカ)
電源バッテリーの考察
- 2200uFのコンデンサを間違ってつけるな(極性のことか?)
- 14.6V以上で使うな
- バッテリーは30~40Ahのものを使うこと
- もし、45Ah以上のバッテリーを使うなら、バッテリケーブルを80cmにする(80cm延長かも?)こと
鉛バッテリーでは極板の大きいほど内部抵抗が小さくなるので、容量が大きくて極板の大きなバッテリーほど内部抵抗が小さいと言えます。こう考えると、容量の制約を設けているのは内部抵抗に適値があるものと考えられます。
45Ah以上のバッテリーに関しての注意書きについては、既存のバッテリケーブル長27cmから+80cm追加しても 2.6mΩ しか変わらないので、バッテリーの内部抵抗に置き換えるとバラツキや誤差でしかないと思います。長くする理由をケーブルの焼損防止と書いているのですが、それも意味不明です。
でも、こんな動画がありました。50Ah のバッテリーでは強すぎたので、バッテリーケーブルを40cm長くしたら、ほどよくなったという事例です。
- Pbバッテリなら、CCA 400~600
- リポバッテリーなら、C30 5000mAh以上 (Cとは充放電特性の指標:電気量の単位クローン=容量[Ah]/3600[sec] )
求められるCCA
内部抵抗は公開情報がありませんが、CCAはバッテリーメーカが公開しています。内部抵抗とCCA(Cold Cranking Ampere)は関連がありそうですので、前述の容量の範囲でのCCAを下記に示します。これを見ると空色の範囲(CCA 300~370)がスポット溶接機の適用範囲と読めます。求められる内部抵抗値
基板調査
写真の下半分中央寄りにある8本足は8051系の8ビットマイコン”STC 15W204S” です。これはスイッチで代用して、主要部分だけLTspiceの回路図にしました。また、MOSFETはLTspiceのデフォルトモデルから電圧とオン抵抗が似ているものを選びました。
マイコンを動かす5Vを78L05で作り、マイコンの制御信号でフォトカプラPC817Cを介してMOSFETのゲート電圧をON/OFFしているようです。R3, R4, R5 はフォトカプラの調整用の抵抗です。
また、R1, R2 はそれぞれがドレイン電圧(電極用ケーブルのマイナス極)とソース電圧(バッテリーのマイナス極)につながっていました。それぞれの電圧はこれらの抵抗を介してマイコンに入っています。電極をワークに押し付けてショートさせると、ドレイン電圧が電源電圧になるので、これをマイコンで見て一瞬遅らせてゲート電圧をONさせているのだと思います。この動作はLTspice回路からは省いていて、解析はドレインが電源とショートしている状態(5mΩの溶接抵抗)として行いました。
MOSFETのON抵抗は1.2mΩが5つ並列なので0.24mΩ、電極用ケーブルでの抵抗は1mΩ x 2 です。これらは溶接ワークの接触抵抗と電源バッテリーの内部抵抗に比べわずかです。したがって、溶接電流は溶接ワークの接触抵抗と電源バッテリーの内部抵抗の大きさで決まると言えます。
- 新品の鉛バッテリーで5mΩ程度
- 新品のリチウムイオンバッテリー(18650)で15mΩ、劣化品で100mΩ
マイナス側の電極用ケーブルと並列に置いている可変抵抗U1は、電流計測のためにキャリブレーションを取る可変抵抗です。電極用ケーブルに生じる電圧降下を併設した可変抵抗で分圧して、きりの良い値(例えば、500A/250mV)を狙うという目論見です。溶接の状態と流す電流との関係を見るためです。
電源の検討(内部抵抗)
電源には車用のPbバッテリーが推奨されているのですが、できれば部屋の中で使いたいのでそのバッテリーには抵抗があります。それよりも、何年か前に買ったジャンプスターターがあるので、使えるならこれにしたいと思います。使えるかどうかの判断は、内部抵抗が小さくて大電流を取りだせるか否かです。
一般のスポット溶接機ならナゲット計3.3mmで3.2kAとあります。ここのデータを見るとナゲット径と溶接電流は比例関係にあります。ネットに挙がっているこのタイプの溶接機の事例を見ると、ナゲット径は0.5mm程度です。電流とナゲット径の比例関係をあてはめると、$ \displaystyle 3.2k \times \frac{0.5}{3.3} = 0.5k (A) $ となります。これを判断基準にするならば、先に示したLTspiceの解析事例が電流543Aで、そのときの内部抵抗が15mΩです。この値はあくまでも理想的な溶接条件であって、実際に溶接できなければ何の意味にもなりません。そうは思いますが、一応のめやすにしておきます。
- 溶接電流: 550A
- 電源の内部抵抗: 15mΩ
ジャンプスターター
6年前にAmazonで買った人気のジャンプスターターを調べてみます。車に置きっぱなしで、2年前にバッテリ上がりのEHV車を動かしたことがあります。
このために作った自作の内部抵抗計で、36mΩ でした。前述のLTspiceモデルで計算すると溶接電流は270A になりました。
小型バッテリー WP1236W
念のために密閉型の鉛バッテリーをAmazonで購入しました。カタログ値では内部抵抗14mΩだったことと、このバッテリーで溶接している動画をYoutubeで見たので、これをポチリました。
自作内部抵抗計での測定結果は 30mΩ、LTSpice計算の溶接電流は 315A です。
溶接電流のキャリブレーション(予備試験)
- つまみの回転に対して電圧の変化が敏感過ぎるので、トリマのタイプに変更しました。
- 2.5mV/5Aに設定していても、次に測ると多いときには20%ほども変わってしまいます。
- 不具合ではなくこういうもののようなので、電流測定の要所でキャリブレーションをすることにしました。
2番目の問題がこの測定方法のダメなところです。mVの測定なので接触抵抗が原因かと思い色々抜き差ししてみましたが、そこではなさそうでした。
考えられることは、大電流を流すことによるケーブル導体の発熱とそれによる抵抗の増加と推定します。ケーブル全体の電位差を可変抵抗で分圧して、体感的にわかりやすい数値への変換をしているだけなので、おおもとのケーブル全体の電位差が変われば、それに比例して分圧した電位差も変わります。
銅線の温度上昇は θ = 0.008(I/A)^2×t という計算式で算出できるらしいので、これで温度上昇を計算してみます。この式はどうも定常状態での計算式のようなので、今回のような過渡状態にはあてはまらないとは思いますが、一応の目安として考えます。
組み立て完成
前述した黄色線の溶接電流以外に、ゲート電圧と電極間電圧も測れるようにしました。ケースはショート防止のためダイソーに売っていた名刺入れを加工して作りました。
溶接結果
Arteck ジャンプスターター
表のように残念な結果です。電流が少なく必要な発熱量が得られない状況です。フル充電での結果なので、これ以上向上させる手はありません。
LTspiceのシミュレーションでは、電源電圧12.5V、内部抵抗36mΩの条件で 280A になりますが、それよりも多くの電流を流すことができています。モデルを合わせこむには、内部抵抗の値が25mΩであると、380A流れます。
強度5での溶接具合
オシロ測定波形
溶接電流は印加時には瞬間的に1000Aを超えるサージが発生しています。一様に比較するため、停止するときの電流値を溶接電流として読み取ることにしました。ゲート電圧は25Vの値が出ていますが理由はわかりません。ACレンジで測定していることが原因かもしれません。
溶接の強度を変えると、印加時間が長くなります。強度1の3ms から、強度5では17ms です。強度の変更は通電時間の違いだけでが、全体での発熱量が変わりますので溶接具合が変わるのだと思います。
Jump Starter 強度1 |
Jump Starter 強度3 |
Jump Starter 強度5 |
小型バッテリー WP1236W
実測の内部抵抗の値からすれば、ジャンプスターターとあまり違いはないかと予想(悲観)していましたが、強度をあげるとぎりぎり使えるレベルかなぁと思っています。ただし、youtube動画の車用のバッテリーの場合に比べれば、溶接性能は見劣りします。
溶接具合
表(電極押圧側) 左から強度1,3,5 |
裏 左から強度1,3,5 |
オシロ測定波形
印加時のサージ電流は650A程度でジャンプスターターに比べ小さくなっています。容量の影響でしょうか?
電流はジャンプスターターに比べ100Aほど大きいので、溶接具合やスポットの見た目がジャンプスターターの場合よりも良好です。
スパークした話
こうなると、以後、溶接できなくなる場合がありました。マイコンがゲート電圧をONする動作をしていないようです。原因はスパークによって電極にススが付着して電極の導電性が悪化した(ショートしない)からだと思います。
スパークした後の電極を拡大すると写真のようになっていました。これを紙やすりでこすってやると、また溶接できるようになりました。
なお、スパークが発生したときは溶接に失敗します。そのときの溶接電流をオシロでみると下図のようであり、ゲート電圧は正常に立ち上がっていても、溶接電流がハンチングを起こして、大電流を保持できていない様子が見られます。
スパーク 溶接強度3 |
まとめ
数年前に買って車の中で放置していた手持ちのジャンプスターターでは溶接できませんでした。原因は内部抵抗が36mΩあるため、溶接電流が500Aも出ないことだと思います。 小型の密閉式PbバッテリーWP1236Wでは、条件によってうまく溶接できます。このバッテリーの内部抵抗は30mΩで、溶接電流は520A程度出せます。 溶接電流の目標値 550A を出すためには内部抵抗15mΩ以下のバッテリーが必要です。安定した溶接を考えると理想は10mΩ以下です。これは、CCA 300以上になります。 これが実現できるのは、新品の40B19L(軽トラ用)です。あるいは、3S(11.1V)のリポバッテリーを2個以上並列につないで使うと実現できそうです。