低ひずみ発振器の自作

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label低ひずみ発振器


ユニバーサル基板での自作に初挑戦の作品です。

オーディオマニアではないのですが、ちょっとしたきっかけでアンプとかスピーカに興味を持ちました。

オーディオの三種の神器とは、
交流電圧計
低周波低ひずみ発信器
オシロスコープ
ということらしいです。

オシロは中華製デジタル格安オシロを持っています。他の計測器はネットで見ていたら、結構自作しているブログがあります。設計ができる訳はありませんが、これらを参考にしたら自分でもできるんじゃないかと思えてきました。使うことよりも、作ることが目的です。

まずは、低ひずみ発振器の製作に挑戦します。

1.State Variable型 低ひずみ発振器

設計できる訳でも、回路を読める訳でもないので、ネットで見た回路をできそうなものからブレッドボード上で再現してみました。LTspiceでのシミュレーションも行いました。

自分の環境では、発振しなかったり、時間が経つと収束したりして安定しなかったりという回路もありました。全く同じ素子を使っている訳ではないので、原因を究明することはしないで、うまくいった回路を使います。

The Art of Analog Circuits のState Variable 発振器(*1)で紹介されている回路を利用させていただくことにしました。発振回路の形式はState Variable(状態変数)型というもので、低ひずみでCやRのばらつきの影響を受けない特徴があるらしいです。


回路は引用元の変数名などを同じにして自分の読みやすいように書き換えました。

発振周波数は、
R=R8=R9=15KΩ
C=C4=C5=0.01uF
のときに、
f0 = 1/(2πRC) = 1061Hz
です。

上の3連のオペアンプが増幅回路で下のオペアンプとFETが安定化回路になっています。


発振条件は R1、R2+FET で決まる負帰還が R10、R11、R12 で決まる正帰還より少し小さい状態です。[引用*1]

とのことなので、その様子を見てみました。

R1=40kΩ
R1=82Ω(引用元の定数)


以下に2件の引用をして、各定数(読み替えが必要)の役割を挙げておきます。

(1) 発振条件と発振周波数

1.3 状態変数形RC発振器
 状態変数形フィルタを応用した発振器。基本回路を図 4 に示す。二つの Rf とCf はそれぞれ同じ値とし、三つの R も同じとして発振条件を計算した。
 状態変数形フィルタは、素子感度が小さい(フィルタの動作が、各素子の誤差による影響を受ける割合が小さい)ため、選択度:Q の大きな BPF を安定に作ることができる。このため、ひずみ率がウイーンブリッジ形に比べて 1/10 ~ 1/100 の発振器が容易に作れる。また、90 度位相差の出力が正確に得られのも大きな特長である。
 この発振器の特長は、

超低ひずみ率
二相出力が得られる。

(2) 低ひずみに影響する因子


下のオペアンプとFETは出力安定化回路で、発振出力を全波整流しオペアンプによる積分回路で平滑、FETを制御して振幅を一定に保ちます。当初FETではなくアナログフォトカプラを試しましたが、特に良い特性は得られず、普通の回路に戻しました。VR1はFETへの局部帰還のバランスを調整するものです。調整することでわずかですが歪率を減らせます。低歪率化にもっとも重要なのは青字のC1とC2です。これらは大きいほどリップルが減って低歪になる反面、振幅が安定になるまでに時間がかかるようになります。

2.製作

ブレッドボート上で検討・検証しながら決めたパラメータを反映させて、回路図を書いてみました。Kicadを使うのは今回が始めてです。


設定周波数を100、1k、10kにするためのCRパラメータは下記表のように決めました。
先例ではR8=R9, C4=C5になるように選別する方法が取られていますが、手持ち部品から同じ値のものを選び切れないので、C4とC5はほぼ同じ値のコンデンサを選別し、R9はトリマ抵抗にして所定の周波数になるようにR9の値を調整しました。

設計値
実測パラメータ
TRIM
実測パラメータ
周波数 [Hz]R [kohm]C [uf]f0 Hz]R8 [kohm]C4 [uf]f0 Hz]R9 [kohm]C5 [uf]f0 Hz]
100150.1106150.1099715.010.106100
10003.30.04710263.30.05069533.150.05061000
100003.30.0047102613.30.0049397833.230.0049310000

切り換えは、アルプスSRRN1043Nというノンショーティング4回路3接点のロータリスイッチを使っています。RとCがそれぞれ2段で周波数が3水準なので今回の切り換えにピッタリです。
オペアンプにはNE5532を2個、J-FETには2SK369GRを使いました。あり合わせですが、抵抗は1/4W金属皮膜 公称1%精度、C4,C5のコンデンサはフィルムコンデンサです。


Kicadを使ったのは、回路が少し複雑なので結線ミスが心配だったからです。
回路図からPCB基板のレイアウトを作ることができます。結線ガイドをたよりにミスなくPC上で結線でき、それを見ながら実際のハンダづけを行えます。

回路作成上のエラーチェックもしてくれるので、私のような初心者には力強い味方です。Kicadを覚えて本当に助かりました。

PCB基板にはサンハヤトのICB293GU(72×95mm、電源とGNDパターン付)を使いました。






結線前の写真は取り忘れましたので、いきなり完成です。

オペアンプの電源には中華製AC/DCコンバータをそれぞれ正負電源用に使っています。DC12V 1A出力の電源です。手前にヒューズを入れています。

ケースはタカチのMB12-5-18がピッタリです。

3.ひずみ率の測定

WaveSpectraを使ってひずみ率を測定しました。

PCとの間には、USBオーディオインターフェース TASCAM US144-MKIIIを入れています。

THD+Nで、
0.066% @ 1kHzでした。

WaveSpectraのひずみ率数値を見ながら、R1とR10を調整した結果になります。

もう少し良いのかと思っていましたが、洗練された部品ではないのでこの程度なのでしょうね。
電源を良くすればもう少し行くかもしれません。




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